2024.11.29
猫の社会にもいじめはあります。その結果、いじめられる側の猫が辛い思いをしたり、命を落としたりすることがあります。
生命にかかわるかは別にしても、いじめは同居猫同士でも起こりえます。また自身が飼っている猫が、どこかでいじめのターゲットになるかもしれません。
そこで本記事では猫のいじめの実情や防止法に関して解説します。また人間による猫へのいじめや虐待の問題に関しても、一部触れています。
まずは猫社会におけるいじめの実態を理解しましょう。
人間社会と似通っている部分があれば、猫社会ならではの特徴もあります。
そのあとで、猫同士における具体的ないじめ行為の内容を解説します。
まずは猫におけるいじめが、何であるのか、きちんと理解しましょう。
これは多頭飼育などを実施する場合にも重要な知識となります。
猫社会でいじめが生じる原因は大きく分けて5つあります。
これらの要因が複数合わさると猫社会でもいじめが発生します。
なかでも最大の要因は猫が有する本能。猫はボス的なポジションを獲得すると、劣位にあるほかの個体をいじめるようになります。
噛み付く、食べ物を奪うだけでなく、周囲に発覚しないよう、こっそりおこなわれることも。
さらにストレスや生存に必要な要素の欠如などがあると、いじめが起こるのも致し方ない部分です。
いじめる猫といじめられる猫はある程度決まっています。
いじめる猫は体格が大きく年齢が高い、いじめられる猫は、体格が小さく腕力が低い。
基本的に人間社会と同様だと考えましょう。
つまり多頭飼育している場合でも、体格に差があるといじめが起こりやすくなります。そのような場合は、いじめが発生しないように
一層の注意が必要となるでしょう。
続いて、猫社会で起こるいじめ行為を具体的に解説します。
それぞれ詳しく解説します。
猫社会でのいじめでもっともよく見られるのが、食事を奪って食べることです。
特に野良猫の世界では、ひとつの獲物や食料がとても貴重です。もしいじめる猫が、いじめられる猫が食事をしているのを見たら、奪いたくもなるでしょう。
このような行為があると、いじめられる猫はたいてい強くは出れません。
それがきっかけで「奪う」「いじめる」のが常態化し、エスカレートすることがあります。
多頭飼育や群れで生活している場合では、「仲間はずれにする」といういじめがあります。このあたりは人間社会とよく似ています。
複数で生活しているなら、そこには先住猫を頂点としたヒエラルキーがあるはず。
もしくは、体格と腕力でトップまで上り詰めた実力者もいるかもしれません。
頂点にいるボスは劣位の猫をうとましく思い、仲間はずれにすることがあります。
また「ほかの猫たちと比較して毛並みが特徴的である」といった理由で、仲間から遠ざけられてしまうことも。
譲り合いの精神を持つ猫と持たない猫がいる。
この通路はなかなか深くて、人間でも先に場所取ったからって古参ぶるやついるけど、譲り合いしないとみんなでご飯する時に仲間はずれにされたりとか色々気付きがある。 pic.twitter.com/QrislCt3JD— Z李 🇺🇦 NO WAR 🕊 (@ShinjukuSokai) August 3, 2024
「譲り合うなどしないと、あとで仲間はずれにされる」といったこともあるようです。
ありがちなところでは、噛みついたり引っ掻いたりすることもあります。
喧嘩とは異なり、相手が負けを認めるような仕草を見せても執ように攻撃します。
ただし野良猫の世界では、逃げれば済むため、あまり一方的にいじめ行為は見かけられません。
ただし多頭飼育環境下では、強い猫が弱い猫に飛びかかり、明確に攻撃することがあります。
関連記事▶︎猫が喧嘩するようになったのはどうして?原因・対策・予防説を解説
また、いじめられる側の猫を執拗に追いかけ回すこともあります。
そもそも猫には、「動く、逃げるものを追いかけたい」という欲求を持っています。これは狩りをするために備わっているものですね。
そして弱い猫が動いたり、逃げたりすることにも興味を示します。
満足すればやめますが、追いかけられているさなかに、弱い猫のほうが転倒したり、自動車にぶつかったりして命を落とすこともあります。
野良猫のいじめは、飼い主にとって重大な話ではありません。しかし多頭飼育時している場合は、いじめが起こりうるため、ある程度の知識と対策が必要になります。
いじめを阻止するために、以下のような対策を実施しましょう。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
猫のいじめがひどいときの対処法として、以下が挙げられます。
このように距離を取り直すのを繰り返せば、しだいに仲良くなり、いじめもおさまっていきます。
関連記事▶︎猫が喧嘩するようになったのはどうして?原因・対策・予防説を解説
多頭飼育時に限った話ではありませんが、避妊・去勢手術を受けさせるのは重要です。
特にオスは、この手術を受けるととたんにおとなしくなり、喧嘩やいじめをしなくなることがあります。
そうでなくとも発情期が訪れる生活は飼い主にとっても大きな負担。かならず避妊・去勢手術を受けるようにしましょう。
去勢手術を受ける費用は、50,000円程度と見ておけば問題ありません。
手術は各地の動物病院で受けられます。早い段階で去勢し、喧嘩の原因を取り除きましょう。
なお去勢手術に関しては、助成金が出る可能性があります。
たとえば日本動物愛護協会は、以下の内容で助成金を提供しています。
(引用:日本動物愛護協会)
このような制度も利用するとよいでしょう。
また、先住猫ファーストを心がけるのも効果的です。
食事、遊び、コミュニケーション、あらゆる面で先住猫を優先しましょう。そうしなければ、相当なストレスが生じます。
そのストレスの根本である後輩猫をいじめたくなるかもしれません。
そもそも猫は、テリトリーや本拠地にて、「もっとも古くから住んでいる猫」を頂点としたヒエラルキーを形成する習性があります。
つまり先住猫と新入り猫であれば、前者のほうがずっと偉いわけです。
にもかかわらず新入り猫が優先された場合、先住猫には大きなストレスが生じて、いじめの原因にあるわけです。このような心理に陥らないよう、先住猫ファーストを心がけましょう。
なお新入り猫も猫社会をある程度理解しており、よほどひどい扱いを受けない限り、先住猫ばかりが優先されることに不満は持たないでしょう。
また双方のプライベートスペースを用意するのも効果的です。一頭でのんびり過ごせる場所があれば、ストレスが低減し、テリトリーを争う必要もなくなり、いじめが起こりにくくなります。
プライベートスペースの一例として以下が挙げられます。
このような場所を用意し、喧嘩やいじめが発生しないようにしましょう。
猫同士ではなく、人間による猫へのいじめ、虐待も発生しています。
これは決して珍しい話ではなく、古くから一定数、事例が報告されています。
ここでは以下の点に関して触れています。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
人間による猫のいじめ・虐待の事例は数多く存在します。
近年では以下動画のような、悲惨な事例がありました。
顔が見えなくなるほど殴打され、最終的に死亡していたとのこと。また口の中に木の枝が突き刺さっており、猫に対する侮辱の意も感じられるような状態でした。
また東京新聞の報道によれば、2023年、動物全体での虐待の摘発は過去最多を記録したとのこと。
個人が直接的に社会的問題である動物虐待を解決するのは困難です。しかし動物愛護団体などに寄付する、里親になるなどの方法で、問題解決を支援する方法はあります。
もしわたしたちねこほーむの活動を応援してくださるのであれば、ご支援のお願いを見ていただければと思います。
また里親募集もありますので、ぜひご連絡ください。
をいじめる・虐待する人の心理として、以下が挙げられます。
過去に起こった動物虐待事件の調書などを読む限り、ストレスや欲求を発散もしくは実現したい、自身のトラウマを相殺したいといった心理が隠れているようです。
それ自体は程度のさこそあれ誰にでもあるでしょう。。しかしその程度が異常に強い、あるいは共感力や倫理観が備わっておらず、行動を制限できないなどの条件が重なると、いじめや虐待につながる傾向にあります。
通常、積極的に猫をいじめたい、虐待したいとは思いません。 しかし幼児期や思春期の子どもは善悪の区別がつかず、結果的に猫をしいたげてしまうことがあります。
一般的な家庭が、猫いじめや虐待の問題に直面するとしたら、子どもの幼稚性に根本の原因が求められるでしょう。そのような事態が起こらないように、「猫を大切にすることがいかに重要か」をきちんと教育する必要があります。
何を持ってしていじめであるかは、人間社会同様に線引きがむずかしい部分があります。
ただ虐待に関しては動物愛護法にて定義されています。
動物虐待とは、動物を不必要に苦しめる行為のことをいい、正当な理由なく動物を殺したり傷つけたりする積極的な行為だけでなく、必要な世話を怠ったりケガや病気の治療をせずに放置したり、充分な餌や水を与えないなど、いわゆるネグレクトと呼ばれる行為も含まれます。
なお、食用にしたり、治る見込みのない病気やけがで動物がひどく苦しんでいるときなど、正当な理由で動物を殺すことは虐待ではありませんが、その場合でもできる限り苦痛を与えない方法をとらなければなりません。
引用:環境省
この定義に当てはまるなら虐待であるし、それに似通った行為はいじめだと判断するのが妥当でしょう。わかりやすくいえば、「猫のためにもならないとわかっていながら、積極的に傷つける」のと「必要な世話をしない」のが虐待もしくはいじめです。
常識的な感覚があれば、このような行動は取りません。しかしじゃれあいがエスカレートしたり、仕事などが忙しかったりしたら、上記のような行動を取ってしまうかもしれません。
したがって飼い主自身も、猫にやさしくできるように意識する必要があります。
本記事では、猫といじめ、虐待に関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
猫をいじめるのは動物愛護法違反、つまり犯罪であるため、警察に通報するのが基本となります。
加害者に直接注意するのは、大きな危険がともなうため、避けましょう。
ただし動物愛護法違反で逮捕されるか、通報を受けてどう動くかは警察の判断になります。
違反が疑いにくい場合などは出動しない場合もあるので注意してください。
猫をいじめる、虐待すると、動物愛護法違反などの罪に問われます。
出典:東京都
動物を傷つけて逮捕されることは、まず考えられません。ただ遺棄(捨てる)も処罰の対象になるのは、知っておきましょう。
どう工夫しても、飼い猫が同居猫に対するいじめをやめない場合があります。
基本的には、何とかやめるように根気よくしつけするほかありません。
どうしてもうまくいかない場合のひとつの方法として、動物愛護管理センターでしつけに関するトレーニングを受ける方法があります。
動物愛護管理センターは各都道府県に設置しているので連絡してみましょう。
また環境省発行のしつけガイドなどもあります。これも参考になるかもしれません。
本記事では猫のいじめや人間による虐待に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
このように猫社会にもいじめはあり、多頭飼育における課題にもなります。
また人間による虐待(遺棄)も社会問題のひとつです。
もしそのような猫を減らしたいと考えているなら、ぜひわたしたちねこほーむにご協力いただければと思います。
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