2023.12.28
このような疑問を持っている人は多いでしょう。
結論からいうと、FIPは症状が重く、また多額の治療費がかさむ厄介な病気です。
かつては「一度かかったらもう治らない」と言われるほどの難病でした。
しかし現代では、きちんと治療すればかなり高い確率で完治、生存する見込みがあります。
本記事ではFIPに関して詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
FIPは、猫にとって大きな脅威になり得る疾患です。特に生後2〜3ヶ月の子猫に多く見られるのが特徴。
まずはFIPに対する理解を深めるため、以下の点を知っておきましょう。
まずFIPがどのような病気で、どういった変化をもたらすのか知っておきましょう。また感染経路と治療費用に関しても理解しておく必要があります。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、同名のウイルスによって引き起こされる感染症のひとつ。感染すると、主に体液の異常、体調不良、眼球振動などの症状を露呈します。
まず、多くの猫は「猫コロナウイルス」というのを保有しています。これは、いわゆる新型コロナ(COVID-19)とは関係がありません。
この猫コロナウイルスは基本的には無害なのですが、不明な原因によりFIPウイルスに変化することがあります。
(引用:SBIプリズム少短)
このウイルスによって現れる諸々の症状がFIPというわけですね。
そして何よりも重要なのが、「FIPを発症した場合、治療しなければほぼ100%死亡する」ということ。したがって発症した場合は、かならず動物病院で投薬をはじめとした治療を受けなければいけません。
また最善を尽くしたとしても、生存率は82.2%程度であることを知っておきましょう。
FIPにはウェット・ドライと2つの類型があり、それぞれで症状が異なります。
<ウェット(身体中の体液の滲出や貯留が主症状)>
<ドライ(体液ではなく、体調、眼球における症状が主体)>
このように、ウェットとドライで現れる症状が異なります。
ただしいずれの場合でも、症状の進行が早いのが特徴。垂水オアシス動物病院によれば、9日程度で死に至るケースもあるとのこと。
したがって症状が見受けられた場合、一刻も早く動物病院へ連れて行く必要があります。
基本的に糞や唾液に限られると考えて問題ありません。
猫コロナウイルス及びその変異型であるFIPウイルスは、糞や唾液に含まれており、それは空気中に拡散します。それが呼吸に乗じて体内に侵入することで感染するわけですね。
また多頭飼いをしている場合、一匹が感染すると全体にまん延する可能性があります。
そして、野良猫を受け入れたり、保護猫を引き取ったりした猫がFIPに感染しているケースも。その場合は当然ながら先住猫も感染します。
ウイルス性であるFIPは、一部地域で大流行することがあります。
たとえば2023年夏ごろ、「猫の島」と呼ばれるキプロスでは、この疾患が蔓延しました。
「猫の島」として知られるキプロスでFIPが大流行していて、これまでに30万匹(島の30%)が死亡
GS-441524は€3,000~7,000と高価で、モルヌピラビルも検討されているがキプロスでは猫への使用は認可されておらず、緊急認可を求める声があがっているとのこと。https://t.co/KNN9MICbZn pic.twitter.com/B4ny2Gfmet
— OTYVET@大学院 (@feline_otyvet) July 16, 2023
キプロスの動物愛護団体によれば、「島内(キプロスは島国)に生息する100万匹のうち30万匹がFIPによって命を落とした」とのこと。
もちろん、日本でも同様のことが起こらないとも限りません。詳しくは後述しますが、そもそもFIPにかからないように、十分に配慮するのが大切です。
FIPを治療する場合、多額の費用がかかるのが問題になります。これにより、安楽死を選択せざるを得ないケースも、過去にはありました。
まずFIPの治療は動物保険適用外です。つまり治療費に関しては全額負担しなければいけません。
さらにFIP治療薬は輸入する関係で高額な傾向にあります。動物病院や薬の種類にもよりますが、トータルの治療費は50万円から100万円ほどになるでしょう。
このように多額の費用がかかるのが、治療における最大の問題。しかし近年では、クラウドファンディングによる治療費の捻出に成功じた事例が確認されています(後述)。
FIPは、発症をすみやかに見抜く検査手法が確立されていません。下がって疑いがある場合は、触診や血液検査、エコー検査などを組み合わせて判断します。少し時間がかかることを覚えておきましょう。
FIPに感染した場合の治療方法は、大きく分けて3つあります。
ほとんどの場合、投薬治療が実施されます。それがうまくいなかった場合幹細胞治療がおこなわれますが、あまり一般的ではありません。
それぞれの治療法の詳細と、飼い主ができる治療のサポートに関して解説します。
FIPの治療でもっとも一般的なのは投薬治療です。近年では主に以下の薬が使用されています。
先述のとおり、MUTIANは、生存率を82%ほどにまで高めた薬です。CHUAFUNINGはそれの後発薬であり、さらに高い治療効果があるとされています。
(引用:動物病院フロンティア)
投薬治療が不良に終わった、あるいは十分な効果が得られなかった場合、幹細胞治療が施されることもあります。
これは再生医療とも呼ばれる方法。FIPを発症していない健康な猫から抽出した組織を投与することで治療を目指します。
(引用:猫との暮らし大百科)
動物再生医療センター病院などが、これらの治療法に一定の効果があるとしています。しかし上述した投薬治療の生存率ほど、きちんとしてデータは出ていません。
FIPに感染した場合、猫には相当な苦痛がともないます。そのため、以下のような対処療法がおこなわれます。
このようにいくつかの対処療法を組み合わせることで、FIPの症状をおさえられます。それは自然回復を早めたり、二次疾患を防いだりするうえで役立つでしょう。
FIPに対してできることは限られており、投薬治療か幹細胞治療に懸けるしかないのが現状です。
それでも飼い主にできることを挙げるとすれば、「ストレスからの隔離」でしょう。
猫はストレスを感じやすい生き物です。治療中にもストレスフルな環境にあっては、症状が悪化する可能性があります。したがって、いかにストレスを感じさせないようにするかが重要です。
たとえば以下のような工夫が考えられるでしょう。
こういったことの積み重ねが、FIPの完治や症状の緩和につながるかもしれません。
先述のとおりFIPの治療には、50万円から100万円ほどの費用がかかります。これを支払えない人は多いでしょう。
しかし、あきらめてはいけません。近年ではクラウドファンディングによって、FIPの治療費を調達するケースが増えています。
(引用:CAMPFIRE)
クラウドファンディングサイトのCAMPFIREには、上記のようなプロジェクトが200件以上ありました。また、ほとんどのケースで数十万円単位の支援を得ています。
近年は保護猫問題などが積極的に取り上げられ、猫の生命や安全に対する意識が高まっています。その背景もあってか、FIP治療を目的としたクラウドファンディングは支援を受けやすいようす。
治療費の捻出がむずかしい場合は、クラウドファンディンサイトを利用するのもおすすめです。なおCAMPFIREの場合は、プロジェクトの作り方に関してスタッフがサポートしてくれます。
FIPは重大な疾患であり、またその治療にも多額の費用がかかります。
大切なのは、そもそも発症しないようにすること。具体的な予防策として以下が挙げられます。
FIPは、予防するのがむずかしい病気だとされています。しかし、工夫しだいでは、ある程度リスクを避けることは可能。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
まず、ストレスフリーな環境を保つようにしましょう。それだけでもFIPの発症の可能性を避けられます。
かもがわ動物医療センターによれば、ストレスを受けやすいと発症率が10%ほどになるとのこと。
(引用:かもがわ動物医療センター)
ストレスがない環境を作る方法はさまざまですが、たとえば以下が挙げられます。
こういった方法で、ストレスを軽減することが可能。ただし何がストレスになるかは猫それぞれ。猫に対する理解を深め、よりよい環境を用意できるようにしましょう。
FIPを予防するうえで、完全室内飼育は非常に有効です。
FIPの感染経路のほとんどは、野外の猫糞に触れたり、そこから発せられるウイルスを吸い込んだりすること。
したがって完全室内飼育をしているなら、感染のリスクは相当に下げられるでしょう。なお、室内で飼育する場合は、以下のように寿命が大幅に伸びるというデータもあります。やはり基本的には完全室内飼育を選びましょう。
(引用:一般社団法人ペットフード協会-令和3年全国犬猫飼育実態調査結果)
ただし親世代からFIPを受け継いでいる、あるいは野良猫などを受け入れた場合には、予防法にはならない点に注意してください。
FIPを予防する観点からいえば多頭飼育も避けたいところです。
この場合、まずは新入り猫がFIPウイルスを持ち込んでしまう可能性があります。
またFIPは、いつどの猫にも発症する可能性があるもの。つまり頭数が多いほどに感染リスクが高まります。
そのうえ多頭飼育の場合、一匹がFIPになると家のなかでまん延するかもしれません。こうなると治療にかかる費用もさらに高額となり、最悪の場合「どの子を治療し、どの子を諦めるか」を選択することになります。
FIPのことだけ考えるなら多頭飼育は避けたいところ。それでも複数匹飼いたい場合は、完全室内飼育などを徹底しましょう。
本記事ではFIOに関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。
FIPの発症率に関する詳細な調査はなされていません。
ただ、ほとんどの獣医師や動物病院は、「猫コロナウイルスのキャリア猫の数%である」と考えているようです。
ただしFIPの発症率は、ストレスレベルによって変動します。かもがわ動物医療センターによれば、ストレスを受けやすいと発症率が10%ほどになるとのこと。
(引用:かもがわ動物医療センター)
したがって、いかにストレスがかからない環境で飼育し続けられるかどうかがポイントとなってくるでしょう。
FIPのリスクがない子を受け入れたいなら、以下の方法が考えられます。
まず、1歳以上の子であれば、発症する可能性はかなり低くなります。FIP自体が、たいてい歳未満、特に生後2〜3ヶ月の子猫期に見られる病気だからです。
また、きちんとした検査がおこなわれているペットショップで購入するのもよいでしょう。
薬品としての性質を考えれば、個人輸入はおすすめできません。
動物病院で処方されるものと違い、安全性に疑問があるからです。
また個人輸入の場合、到着しなかったり、税関で止められて配送が遅れたりすることもあります。
しかし、正規の方法でFIPの治療薬を投薬する場合、高額な費用がかかるのも事実。その点を踏まえて、「自己の判断で個人輸入するのも致し方ない」とする動物病院や専門家もいます。
治療薬は動物病院で処方してもらい、投薬するのが理想ですが、それができない場合の最終手段として、個人輸入があると考えておきましょう。
本記事では、FIPに関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
かつては致死率100%とされたFIPですが、近年では新薬開発により、生存率は劇的に効率しました。費用はかさみますが、クラウドファンディングなどを利用して、何とか治療をやり切りたいところです。
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