2025.05.30
結論からいえば、猫を一生涯ケージ飼いするのは不可能です。ケージ飼いと室内での放し飼いを組み合わせることになるでしょう。
本記事では、一生ケージ飼いできない理由や、正しいケージの利用法を解説します。これからケージでの飼育を始めようと考えている人はぜひ参考にしてください。
猫を、一生ケージ飼いできない理由は、猫の心身の健康を著しく脅かすからです。本来、自由に動き回ったり、飼い主と触れ合ったりすることで健康を維持できますが、生涯にわたってケージ内にいては、それらの機会が失われます。
公益社団法人日本動物福祉協会も、飼育のなかで行動の自由を保障するべきだと述べていました。
この理由から、猫を一生ケージ飼いするのは避けなければいけません。
しかし、ケージ飼いと放し飼いを併用するのは、猫と飼い主双方に対して大きなメリットをもたらします。主だったところで以下が挙げられるでしょう。
ケージ飼いを組み合わせれば、暮らしや生活、猫の健康は大きく向上します。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
まず、安全して飼育できるようになるのがメリットです。ケージを導入すれば、誤飲や感電のリスクを減らしたり、脱走や怪我を防いだりできます。
また、子猫期や怪我・疾病がある猫の一時的な避難所にもなるでしょう。
さらに、単独でゆっくり休める場所を提供し、より落ち着いた暮らしをもたらすことも可能。
ケージがあれば、より安全に猫を飼育できるようになります。特に留守番を任せる場合などは、このメリットはより重要となるでしょう。
なお、段ボールに毛布を敷き詰めたものなどを置いておくと、さらに安心して過ごせるようになります。
また、飼い主が飼育に慣れていない場合は、ケージの存在が心強いサポートになります。
初めて猫を飼育する場合、どこで寝かせるのか、どこにトイレを配置するのか悩むでしょう。安全を確保する方法もわかりにくいはず。
しかしケージがあれば、寝床とトイレの場所が決められます。行動範囲も制限されるため、管理や観察も簡単になるでしょう。
なお、公益社団法人日本愛玩動物協会が「初心者はまず、ケージ飼育で環境に慣らすのが安全」としています。
飼育に自信がない場合は、ケージを導入するとよいでしょう。
ケージは、多頭飼育時の避難所として活用できます。
多頭飼育している場合、猫同士のケンカやいじめが起こりがち。
そのような場合、被害を受けた猫をケージ内で隔離し、安全を確保できます。
また、多頭飼育時でも、ケージが十分に広いのであれば、同時に2匹を入れることも可能。
先述のとおり、多頭飼育の環境下でなくても、怪我をしたり、体調を崩したりしているときの退避先として役立ちます。
ケージ飼育を取り入れていると、キャリーバッグでの運搬に慣れやすくなります。
出典:Amazon
猫を動物病院に連れていく場合、かならずキャリーバッグに入れなければいけません。
しかし、注射や検査を経験している場合、簡単に入れられないことも。キャリーバッグを見ただけで、そのときの痛みや恐怖を思い出してしまうからです。
嫌がる様子を見て、「動物病院での診察やワクチン接種を諦める」などのケースも。
しかしケージ飼育している場合は、たとえ過去の経験があっても、ある程度キャリーバッグを怖がらなくなる傾向があります。
ケージがあれば、動物病院への運搬も多少楽になるでしょう。
ケージ飼いを用いれば、以下のような住宅内の破損なども避けられます。
猫を飼育する際、家具や家電が壊れたり、床が汚れたりするのが、飼い主の大きなストレスになりえます。
しかしケージ飼いを導入すれば、これらの負担の大半を軽減できます。
住宅の環境を守るためにも、ケージでの暮らしを積極的に検討しましょう。
猫をケージ飼いする場合のポイントとして、以下があげられます。
ケージ飼いでは、放し飼いの場合と異なる工夫を用いることで、より快適かつ健康に暮らせるようになります。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
ケージ飼いする場合は、大きめのサイズのケージを用意しましょう。
広いケージ内なら、猫はストレスを感じず、リラックスして過ごせます。
可能であれば、180cm程度の高さがあるとよいでしょう。
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また、子猫の場合はこれから大きくなることを念頭におく必要があります。 成猫になると、体長50cm、体重4kgほどに成長します。
また、上下運動できる工夫を取り入れるのもおすすめです。
猫はケージ内で過ごしていると、運動の機会が少なくなります。
ケージの中だけではなく、フローリングに猫のおもちゃなどを配置しておくとよいでしょう。
完全室内飼育に拘らない場合は、外に出してパトロールさせるのもよい方法です。
また、清潔なトイレと食器を用意するのも大切です。
猫は不潔な環境を強く嫌います。トイレや食器が汚れていると、排泄を我慢したり、食事を摂らなかったりするかもしれません。
したがって清潔なトイレや食器を用意する必要があります。
これらは定期的に清掃し、一定以上は汚れないようにしましょう。
自動給餌器などを使うと、食事の世話は相当に楽になります。
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日当たりや空気の流れを意識した場所に、ケージを設置するのも有効です。
適度な光が差し込み、風通しもよければ、猫は快適に過ごせます。猫はある程度温暖で、湿気がこもらない場所を好むからです。
一方で、エアコンの風が直撃したり、直射日光が当たったりする環境は、猫にとって快適なものではありません。
このような背景を理解し、できるだけ日当たりが良好かつ適切で、風通しがよい場所にケージを設置するようにしましょう。
また、日中は外に出して運動させましょう。
ケージ内では自由に動き回れず、運動不足に陥りやすいです。
結果として、肥満や腎臓関連の病気を引き起こすこともあります。
しかし、日中に外に出して運動させる習慣をつければ問題は起こりにくくなるでしょう。
また、早い時間に運動させることで、夜の寝つきがよくなり、夜鳴きなどを防ぐ効果も得られます。
猫をケージ飼いする場合は、いくつかの注意点を把握しておく必要があります。
これらを知識として持っておくと、より快適かつ健康に暮らせます。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
基本的に、猫をケージ飼育いすると、ややなつきにくいです。
飼い主との接触時間が限られるため、信頼関係を築くスピードが遅くなる、もしくは築きにくくなるかです。
とくに子猫期に十分なスキンシップが取れないと、人を怖がるようになることもあるため、注意が必要。
一方で、安心できる場所としてケージを活用しつつ、外に出したときに十分に遊んだり話しかけたりすれば、基本的には問題なくなつかれます。
まれに、網の隙間を抜けて、ケージから脱走するケースがあります。 これは、体が成長しきっていない子猫期にありがちなトラブル。
猫は成猫でも、相当にスマートな体型をしており、12cmの小さな穴でも通過できます。
子猫の場合は、さらに狭いところも通過できるでしょう。 網の目が粗いケージも、通れてしまうかもしれません。
通過を防ぐためにはアクリルシートを巻き付けるのが有効です。
通気性を確保するため、多くを巻き付けすぎないようにしましょう。
勘違いされがちですが、ケージ飼いをしても、異常な使用がなければ寿命は縮まりません。
適切な配慮がなされたケージ飼いは、猫にとってリラックスした暮らしをもたらすもの。
ストレスを軽減する効果もあるので、寿命が延びることがあっても縮む原因にはなりません(参考:東京都動物愛護相談センター)。
ただし、不必要に長時間ケージに入れるなどの不適切なケージ飼いは、ストレスや体調不良の原因になります。その場合は寿命に対して悪影響をおよぼすかもしれません。
必要に応じて外に出すなどして、ケージ飼いがストレスの原因にならないよう、注意しましょう。
ケージにカーテンを設置すると、猫にとってより安心して過ごせる環境を構築できます。
猫は、暗くて狭い場所に隠れると安心する生き物。したがって、カーテンで視界や光を遮ることで、より落ち着いて過ごせるようになります(参考:東京都動物愛護相談センター 飼育ガイド)。
また、来客がある、掃除機をかけるときに感じる恐怖を軽減することも可能。
必要に応じてカーテンを使って、猫が安心して過ごせるように工夫しましょう。
ただし、完全に覆うなどすると、通気性が損なわれるため、部分的にカバーするようにしましょう。
本記事では猫のケージ飼いに関して解説しました。
ここではよくある質問に回答します。 猫のケージ飼いはかわいそう?
完全室内飼育はかわいそう? マンションでは猫のケージ飼いが必須? ケージ飼いに向いている猫の種類は? それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
適切に配慮されたケージ飼いは、「かわいそう」とはいえません。先述のとおり、安心して過ごしたり、リラックスしたりする機会を与えられるからです。
たとえば東京都動物愛護センターも「ケージ飼育は安心して過ごせる自分だけの空間を作るうええで役立つ」旨を伝えています。
ただし、不必要に長時間ケージに入れたり、強く拒否しているにもかかわらず閉じ込めたりするのは、猫にとって大きなストレス。
あくまでも猫の気持ちを尊重し、適切な方法でケージ飼いを実施しましょう。
完全室内飼育は、以下の理由から「かわいそう」とはいえません。
猫を室外に出すと、ほかの動物に襲われたり、迷子になったりするリスクを避けられます。
また、完全室内飼育では寿命が伸びることもこともわかっています。
2021年に一般社団法人ペットフード協会が発表した令和3年全国犬猫飼育実態調査では、平均の寿命が15.66歳と報告されています。
(引用:一般社団法人ペットフード協会-令和3年全国犬猫飼育実態調査結果)
しかし外に出る習慣がある場合、平均よりも2、3年ほど寿命が縮まるため、完全室内飼育の実施で寿命を伸ばすことが可能。
また、住宅が十分に広ければストレスも感じにくいため、完全室内飼育はかわいそうだといえません。むしろ、猫と飼い主の安全かつ幸せな生活を支える、適切な選択肢だといえます。
マンションでの飼育で、ケージ飼いは必須ではありません。しかし、以下の理由から、ケージを導入したほうがよいでしょう。
猫の足跡は、階下にも響くほど大きなもの。特に古いマンションは遮音性が低く、ほかの住民の生活をおびやかしやすいです。
マンションでの飼い方
マンションで猫を飼うときに何より注意しなければならないのは、近隣住民へ迷惑をかけないこと。部屋の中に毛が落ちるからといって、ベランダでブラッシングするのはやめましょう。
下層階に住人がいる場合は、騒音にならないように注意することが大事です。 pic.twitter.com/22jQvDAACJ
— 一般社団法人福岡ねこともの会サポートクラブ (@nekotomoclub20) November 15, 2020
さらに壁紙に傷をつけるなどして、クリーニング代が必要になるかもしれません。
このようなことを防ぐため、マンションでは猫のケージ飼いを実施するのがのぞましいです。
以下の猫種は、比較的ケージ飼いに向いているとされます。
これらの猫種は環境に順応する能力が高く、ケージ飼いでもストレスを感じにくいです。
一方で、アビシニアンなど運動量が豊富な猫種、元々は野良猫だった猫は、ケージ飼いに慣れるまで時間を要します。
また、猫種に限らず、「ケージ飼いされるのが嫌いな猫」がいる点にも注意してくだい。猫種名だけで判断せず、あくまでも猫ごとの性格に合わせて、飼い方を考える必要があります。
本記事では、猫のケージ飼育に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
猫種問わず、猫を一生涯、ケージ飼いするのは現実的ではありません。あっという間に心身の調子を崩してしまうでしょう。
ただし部分的なケージ飼いは猫と飼い主双方の暮らしを向上させるものです。ぜひケージを導入し、より安全かつ快適な環境を整えましょう。
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