2024.01.31
猫を飼い始めるとき、外に出すことを認めるかどうか、悩ましいところですね。
結論からいうと、外に出すべきではなく、可能な限り完全室内飼育を心がけるべき。
今回は、猫を外飼すると生じるリスクや、完全室内飼育のメリットなどを解説します。猫を飼うことを考えている人はぜひ参考にしてください。
猫を外飼いするリスクは数多く挙げられます。中でも以下は重大です。
ほとんどが死亡や失踪につながりうるものです。それぞれのリスクがどの程度か詳しく解説します。
外飼いする場合、まず交通事故のリスクがついて回ります。自動車と接触すれば最悪の場合死亡、最低でも大怪我は免れ得ないでしょう。
特に交通量が多い地域では、交通事故のリスクはさらに高くなります。
感染症も心配です。室外にはあらゆるウイルスが蔓延しており、またワクチンで予防できないものも少なくありません。
こういったリスクがあるだけでも、外飼いするべきではないと感じられるでしょう。
関連記事▶︎猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)とは?治療法や予防法を解説
猫は、基本的には出かけても家に戻ってきます。しかし、まれに迷子になって、戻って来れないケースも。その原因として以下が挙げられます。
いずれの場合でも探し出すのは簡単ではありません。特に「トラックの荷台で運ばれた」となれば、他県まで連れて行かれているなどの可能性も。
また避妊や去勢をしていない場合、「異性猫を追いかけて駆け落ちする」ケースもあります。
災害をきっかけに離れ離れになることも。
さらに虐待や盗難などの被害に遭う可能性もあります。
残念ながら、人間による猫への虐待を報じるニュースは後を絶ちません。
猫は俊敏なのでそうそう被害に遭いませんが、中には罠を仕掛けてまで捕まえていじめようとする人もいます。外に出すと、こういうリスクに関しても考えなければいけません。
また盗難の可能性もあります。スコティッシュフォールドなど高価な猫がターゲットになりがち。悪意がなくても、「可愛いから育てたい」という理由で持ち帰る子供もいます。
また誤食や誤飲のリスクもついて回ります。
毒性のある植物を食べたり、汚い水を飲んだりして体調を崩す可能性があるわけですね。
場合によっては人工物などを誤って飲み込んでしまい、摘出手術が必要になることも。
さらには、近隣住民が、本来猫に与えてはいけないものを餌として提供する可能性もあります。
猫を外で飼うことが、近隣トラブルにつながることもあります。具体的には以下が考えられます。
糞害や尿害、騒音などは、近隣住民にとって大きな迷惑になりえます。これが続くと、直接に苦情を受けるなどの事態に発展するかも知れません。
外飼いしているだけで、世帯そのものが地域で生活しづらくなるケースもあるのです。
外飼いにはリスクがある一方、完全室内飼育にはさまざまなメリットがあります。
上記のメリットは、猫と飼い主が、末長く健やかに生きることにつながります。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
最大のメリットとして、寿命が伸びる点が挙げられます。
一般社団法人ペットフード協会によれば、完全室内飼育をすると、そうでないケースと比較して寿命が2〜3年ほど伸びるようす。
(引用:一般社団法人ペットフード協会)
つまり飼い主と猫がともに過ごせず時間が長くなります。理由として、怪我や感染症のリスクが下がったり、外の脅威から生じるストレスを感じにくくなったりする点が挙げられるでしょう。
猫の寿命が伸びるのは、完全室内飼育を実施するうえで最大のメリットです。
脱走や盗難をはじめとした、あらゆるトラブルを避けられるのもメリットです。
外に出なければ、迷子になったり、誰かにさわられたりする可能性はほぼありません。
外飼いするうえで大きなリスクになるのは、上記のトラブルによって猫と飼い主が生き別れてしまうこと。
しかし完全室内飼育に切り替えれば、よほどのケースを除いて限り最後まで生活を共にすることが可能です。
そのほか虐待や間違った餌付けなどによる被害を被ることもなくなります。
また、感染症や怪我を予防することも可能です。
ワクチンでは防げないさまざまな感染症をはじめ、致死性の高い猫エイズやFIPなどに感染することも、まずなくなるでしょう。
怪我に関しては完全室内飼育でもありえます。ただ、自動車にはねられたり、他の猫に噛みつかれたりするなど、大怪我につながるようなことは避けられるはず。
また他の猫に感染症をうつしたり、怪我をさせたりして、加害者になるケースも避けられます。
もちろん、自動車事故などを避けられるのも、大きなメリットといえるでしょう。
以下のような近隣トラブルを避けられるのもメリットです。
鳴き声による騒音など、一部は完全室内飼育でも完全に防げるものではありません。
それでも糞害や尿害や家財の破壊などを避けられるのは大きなメリットです。
なお猫の近隣トラブルに関しては、多くの市区町村が注意を出すなど、問題として重大視されています。
猫が家の庭や畑を荒らしたり、ふんをして困っているなどの苦情が寄せられています。近隣とのトラブルを避けるためにも、猫の飼い方について下記のことを守りましょう。
・屋内飼育をしましょう。
・首輪や名札などの所有者明示をしましょう。
・不妊去勢手術を行いましょう。https://t.co/PxgRgHCaZO— 那珂市 (@naka_city) January 12, 2024
それだけに、完全室内飼育で近隣トラブルを防ぐのは重要だといえるでしょう。
外飼いによって生じるリスクを考えれば、完全室内飼育を徹底するのをおすすめします。上述したとおり、さまざまなメリットがあり、それは猫と飼い主が末長く幸せに暮らすことにつながるでしょう。
そのためには、以下のポイントを実施するのが大切です。
完全室内飼育を実施するには、室内環境などをきちんと整えるのが重要です。そうでなければ、室内で暮らすことが、かえって猫にとって苦痛になるかも知れません。
それぞれのポイントに関して詳しく解説するので参考にしてください。
まず、キャットタワーやおもちゃなどを用意しましょう。運動不足やストレス解消に役立つからです。
基本的に猫は、元気にあちこちを動き回る生き物です。完全室内飼育にするとその機会が限定されるので、その部分を補う必要があるでしょう。
以下のようなキャットタワーがあれば、昇降による運動の機会を創出できます。
もちろん、猫用のおもちゃなどを用意するのもおすすめ。それを使って定期的に遊ぶ習慣を作れば、運動不足やストレスを解消することが可能です。
ただしタワーやおもちゃに飽きてしまうこともあります。その場合は買い替えたり、位置を変えたりして新しい楽しみを提供できるように工夫しましょう。
完全室内飼育を実施する場合、猫が一匹でゆっくり過ごせる場所を作りましょう。そのような場所を作ることで、猫のストレスを減少させ、室内での飼育がしやすくなるからです。
たとえば以下のような場所を用意するのがよいでしょう。
猫用のハウスとは、下図のようなもので、3,000円くらいで購入できます。
もし猫が押し入れやタンスの上など、お気に入りのスポットを見つけたなら、その場所を与えてやりましょう。
猫は時として人に甘えたり寂しがったりします。一方で、一匹で過ごす時間も必要です。
そういった場所を用意できれば、完全室内飼育でも余計なストレスを感じずに済むでしょう。
完全室内飼育を実施する場合でも、以下のような事故対策をきちんとおこないましょう。
室外より安全とはいえ、完全室内飼育でも事故は考えられます。
上記のような事故対策をおこない、怪我をしないように徹底しましょう。
完全室内飼育では、とにかく脱走できないようにするのが重要です。一度室外に出てしまうと戻って来れなくなる可能性があります。
また外の世界を知ってしまったことで、完全室内飼育が継続できなくなることも。
脱走を防ぐうえで有効なのは、玄関や窓に防止柵をつけること。玄関と柵で二重ロックになるので、外へ出てしまうリスクを下げられます。
(引用:creema)
ただし費用がかかるのが難点で、1箇所あたり5,000円から20,000円ほどかかります。予算が厳しい場合は、優先順位の高いところから設置しするだけでもよいでしょう。
そのほか、窓や扉を開けないようにストッパーをつけたり、ネットを張ったりする方法もあります。自宅の構造に合わせてうまく脱走を防止しましょう。
どれだけ脱走を防止しても、何らかの原因で猫が外に出てしまうこともあります。
このケースに備えるため、GPS機能がついた首輪などをつけるのがおすすめです。
(引用:Amazon)
これを取り付けておけば、脱走時にGPS機能を用いておおまかな位置を把握できます。
価格も1,000円前後と決して高価なわけではありません。
万が一の可能性にも備えておきたいなら、このような首輪の装着も検討しましょう。
完全室内飼育を目指す場合、かならず去勢・避妊手術を受けるようにしましょう。
「室外に出さないのであれば手術は必要ない」と考える人が多いですが、これは誤りです。
去勢や避妊をしておかないと、生殖能力を獲得した以降、繁殖を目的とした行動を取るようになります。そうすると室内のあちこちで走り回ったり、攻撃的になったりして、飼育に影響が出てくるわけですね。
したがって去勢・避妊手術を受け、猫を落ち着ける必要があります。
去勢・避妊にかかる費用は動物病院によりますが、おおむね20,000円から40,000円ほど。
手術自体は生後半年程度で受けられます。その時期になったら動物病院へ連れて行きましょう。
本記事では、猫を外飼いするリスクや、完全室内飼育のメリットなどに関して解説しました。
ここではよくある質問に回答します。
たしかに「外の世界を知れない」という点に関して、かわいそうだとする意見はあります。
しかし完全室内飼育だとしても、室内の環境が良好であれば、猫は穏やかに過ごすことが可能です。
そのためには十分な食事や運動の機会、適切な温度管理などをおこなう必要があります。
反面、室内環境が整っていないと、猫にとっては快適とは言い難い暮らしになるでしょう。
外出の機会がなくとも、安心して過ごせる環境を整えるのが重要です。
外飼いがかならずしも無責任とは言えません。
近隣住民への影響や猫の健康状態に配慮したうえで外飼いしているのであれば、特に問題はないでしょう。
しかし、中にはきちんとした配慮もなく外飼いをしているケースもあります。たとえば避妊・去勢手術を実施せず、長期にわたって外飼いしているケース。
この場合は猫が異常繁殖し、以下のような多頭飼育崩壊を引き起こすことも。
またワクチンを接種せず、猫を感染症に危険に晒しているケースもあります。
このように十分な配慮を実施しないうえで外飼いすることに対して、無責任だと感じる人もいます。
2024年1月現在、猫の外飼いを禁ずる法律の存在は確認できません。少なくとも法的には問題ないと考えましょう。
また外飼を禁止する動きも、特段見受けられません。
感染症の拡大など、特に重大な問題が起こらない限り、外飼いが禁じられることはないでしょう。
結論からいうとかなりむずかしいでしょう。
外飼いされている猫は、自宅を中心に、自分なりのテリトリーを定めています。
そしてそのテリトリーに侵入者、つまりよその猫がいないか、日々チェックする習性があります。猫が外に出るのを「パトロール」と表現することがありますが、実際に見回っているわけですね。
しかし外飼いから完全室内飼育に切り替えられると、「見回りに出たいが、どうしても出してもらえない」状態が続きます。これは猫にとって大きなストレスで、個体によってはノイローゼになってしまうことも。
したがって外飼いから完全室内飼育に切り替えるのはかなりむずかしいといえるでしょう。
本記事では猫の外飼に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
外飼いと完全室内飼育、どちらか選べるのであれば、後者を推奨します。
室内で育てるという決まりがあるだけで、あらゆるリスクを遠ざけ、穏やかかつ健康に暮らせるでしょう。
ただしそのためには、室内を猫にとって住みよい環境に整えるのが条件となります。遊び場を作ったり、事故対策をしたりして、安心して暮らせるような場所にしましょう。
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