2024.05.31
人間同様に、猫もまた風邪を引きます。しかし人間とはややようすが違い、原因や症状が異なります。
またその治し方も人間とは異なる点に注意が必要。
そこで本記事では猫風邪の原因や症状、治し方などを解説します。ぜひ参考にしてください。
まず猫風邪に関する基本的な知識を学びましょう。ここでは以下を解説します。
これを知っているだけでも、予防や治療に役立ちます。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
猫風邪にかかる原因は、以下のような一部のウイルス感染であることがほとんどです。
ほとんどがヘルペスウイルスか、カリシウイルスによるものです。これは自然界に当たり前に存在し、いつでも感染する可能性があります。
つづいて原因として多いのが猫クラミジアというウイルス「クラミジア」と呼ばれていますが、性病の類ではありません。
それ以外にもウイルスは存在しますが、猫風邪の場合は上記3つのうちいずれかと考えましょう。
なおこれらのウイルスに、人間がかかることはありません。したがって「猫から風邪をもらう」ことは、あり得ないので安心してください。
猫が風邪を引いたときの症状として以下が挙げられます。
<ヘルペスウイルス(上部呼吸器感染)>
<猫カリシウイルス(上部呼吸器感染症)>
<猫クラミジア>
いずれのウイルスでも以下のように明らかに体調を悪そうにしているので、わかりやすいでしょう。
ウイルスの感染経路として以下が挙げられます。
猫風邪の原因のウイルスは猫ー猫間の感染力が高く、多少の接触でも移ってしまいます。たとえば多頭飼いしていて、一匹が発症したなら、あっという間に家庭内で流行している状態になるでしょう。
そうならないように、早期発見、予防するのが重要です。
猫風邪の症状が出たら、以下のように対応しましょう。
それぞれのステップを解説するので参考にしてください。
まず以下の症状が出たら動物病院へ連れて行きます。そこで獣医師による指示を受けましょう。
場合によっては、猫風邪に効く抗生物質や、対処療法に役立つ点眼薬や塗り薬が処方されます。
ただ、動物病院でも、猫風邪を根本的治療するのはほぼ不可能です。猫風邪には特効薬などがなく、基本的に症状をおさえたり、副作用や合併症を回避したりして、自然治癒を待つことになります(支持療法)。
したがって動物病院へ行って、元気になって帰ってこれるわけでない点に注意しましょう。
なお近年は土日や深夜でも診察を実施する動物病院が増えています。
(引用:夜間・救急動物病院マップ)
夜間・救急動物病院マップを使えば、地図上から対応可能な動物病院を検索できます。診療時間外の場合はこれを利用しましょう。
なお治療費に関しては、3,000円から5,000円ほどかかるでしょう。
猫風邪だった場合、動物病院からは、「安静にさせておくように」という趣旨の指示があります。指示通り、静かに休ませましょう。
動物病院へ連れて行かず、自身で軽い猫風邪と判断した場合も同様です。
なお猫にとっての適温は23度から28度程度。この気温だともっとも体力の消耗が少なく、風邪を治すことに集中できます。
安静に、ということなので、子供や他の猫がちょっかいを出さないよう、ある程度隔離するとよりよいでしょう。
回復にかかる期間ですが、症状によるものの、おおむね2日から1週間ほどで快方します。
餌と水分をできるだけ多く摂取させるのも、以下の理由から重要です。
このあたりは人間と同様です。できるだけ多くの栄養を摂り、猫風邪ウイルスと戦う抵抗力を高く保ちましょう。
また必要に応じて、抗生物質や点眼の投与をおこないます。
抗生物質とはたとえばジスロマックのようなものです。
出典:ぽちたま薬局
こういったものをきちんと投与することで、改善を早められる可能性があります。
その他点眼などは、根本治療および対処療法として効果的。猫風邪に苦しむ猫を少しではあるものの楽にさせられるので、きちんと支持どおりに投与しましょう。
あまり一般的ではありませんが、早期治療を目指す、症状が重篤な場合は、インターフェロン注射という治療が使われます。
出典:TORAY
インターフェロンとは、猫が感染しうるあらゆるウイルスに対して非常に効果的な薬剤。主に致死率が高いFIPという難病治療に使われますが、猫風邪の症状がひどい場合も選択されることがあります。
ただしインターフェロン注射は1本あたり10,000円を超えることが多く、経済的負担になりがち。とはいえ動物病院によっては数千円で済むこともあるので、可能な限り比較検討するのがよいでしょう。
基本的に猫風邪は短期間で自然治癒するものであり、過度に恐れる必要はありません。とはいえ猫にとっても風邪は辛いものです。
以下のような方法で、できる限り予防するようにしましょう。
まず、予防接種はきちんと受けるようにしましょう。
猫風邪の予防を優先するなら、以下いずれかの接種が考えられます。
3種混合ワクチンは、猫カリシウイルス、ヘルペスウイルス感染リスクを低減させる効果があります。
5種の場合は、それに加えて、猫クラミジアに対する免疫も獲得できます。
いずれかの接種を、獣医師の指示どおりに受けていれば、かなり高い確率で予防できるでしょう。
その他7種ワクチンなども存在しますが、猫風邪の予防が目的であれば、そこまでこだわる必要はありません。
一般的なことですが、部屋の湿度を調整し、ウイルスが生存しにくい環境を保つのも大切です。
出典:SUMMO
SUMMOによれば、湿度40〜60%が、もっともウイルスが繁殖しにくく、またカビやダニが生じない水準とのこと。
一方で40%を割り込むと、先述した菌類が繁殖しやすくなります。
加湿器やエアコンなどを利用し、常にウイルスが繁殖しにくい状況を保ちましょう。
加湿器がなければ、簡単なものでもよいので、購入したいところです。安ければ5,000円くらいでも購入できます。
また定期的な入浴を実施するようにしましょう。
基本的に猫は、自らを水に浸けるような行動をおこしません。グルーミングのみで清潔な状態を保とうとします。
もちろんグルーミングには効果があるのですが、予防に関して考えるなら、入浴の習慣も必要です。
月に2、3回ほどお風呂に入れると、猫風邪の予防としては十分な効果が得られるでしょう。
またお風呂の入れ方として以下の動画が参考になるので参考にしてください。
ただし基本的には、猫は入浴を嫌います。あまりにも嫌がるなら、無理させないほうがよいでしょう。
ストレスの少ない環境を保つのも重要です。精神的に負担のかかる状態では、ウイルスに対する抵抗力が失われがちだからです。
ストレスのない環境を保つには、以下のような工夫が有効。
こういった環境が整っていれば、猫のストレスレベルを十分に下げられます。可能な範囲で、猫が過ごしやすい条件を整えていきましょう。
特に湿度と温度はエアコンを使ってうまく調整したいところ。
執拗にちょっかいを出すのも避けましょう。必要以上のコミュニケーションはかえってストレスになります。
猫風邪予防にもっとも効果的なのは完全室内飼育を徹底することです。
完全室内飼育とは、生涯もしくはある一定のタイミングから、室外に一歩も出さず飼育することを示します。
なお完全室内飼育に関しては、猫の平均寿命が伸びるという明確なデータも出ています。
一般社団法人ペットフード協会によれば、完全室内飼育をすると、そうでないケースと比較して寿命が2〜3年ほど伸びるようす。
(引用:一般社団法人ペットフード協会)
その他交通事故、迷子などのリスクもほぼ完全に避けられます。猫風邪の予防のみならず、猫と人間の穏やかな暮らしを守るという意味でも、完全室内飼育を強く推奨します。
本記事では猫風邪に関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。
猫風邪は、あまり知られていない疾患であり、わからないことも多いでしょう。その点に関してできるかぎりの知識やノウハウをお伝えするので参考にしてください。
仮に老齢だった場合、猫風邪を自然治癒することができず、治せないこともあります。
また心配されるのが、「猫風邪ではなく他の病気かもしれない」ということ。
通常、猫風邪は、長くても1週間ほどで快方するケースがほとんど。にもかかわらず長期的に体調を崩しているなら、猫風邪以外の何らかの問題があると考えるのが自然です。
もしいつまで経っても症状がおさまらない、もしくは悪化しているなら、動物病院で診てもらうようにしましょう。
ごくまれに後遺症が残るケースはあります。たとえば以下のように、眼球が白濁して、視力に難を残すことも。
出典:猫部
(猫から見て)右目が変色しているのがわかります。
これは元々の生育環境が、多頭飼育崩壊の状態にあり、適切な治療を受けられなかった結果です。
すなわち、猫風邪が重篤化したとき、きちんとした対応をとならないと後遺症になるかもしれません。
ただし、過度に心配する必要はありません。軽度の場合は安静にさせる、重篤と見られる場合は動物病院へ連れて行くなどすれば、ほとんどのケースで後遺症を避けられるでしょう。
他の猫に対しては容易に感染します。猫と猫の間での感染力は非常に高く、多少の接触があっただけでも移りかねません。
感染を避けるためには、とにかく完全室内飼育することを推奨します。
また、室内を保湿し、ウイルスが生存しにくい環境を保つのも重要。
多頭飼いしている場合は、蔓延を避けるため、感染した猫を別の部屋に隔離するなどして対策するのをおすすめします。
結論から言うとこれは誤りです。人間の風邪薬は、猫には絶対に与えてはいけません。
そもそも人間が口にするもののなかには、猫が食べた場合、猛毒になりうるものが多々あります(たまねぎなど)。
そして風邪薬に含まれているアセトアミノフェンという解熱成分が、猫にとっては中毒症状を引き起こす原因になります。
これはノーシンピュアなど一般的な薬品にも含まれています。
出典:株式会社アラクス
そのほかにも、同様の症状を引き起こす成分が存在しないとも限りません。
したがって人間の風邪薬を猫に与えるのはやめましょう。
関連記事▶︎猫にあげていいものとあげてはいけないものを一覧で解説
に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
猫も人間同様に風邪を引きます。また猫風邪に関連したウイルスは感染力がきわめて高く、簡単に移ってしまいます。
なるべく感染しないように、外で出すのは控えたいところ。
またどのような飼育をおこなう場合でも、やはりワクチンはきちんと摂取したいところ。
きちんと予防策を取って、猫風邪にかからないように工夫しましょう。
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