2023.11.30
このように思っている人は多いのではないでしょうか?
猫エイズは、非常に重大な病気です。とはいえ予防する方法はあるし、罹患したとしてもある程度対処することは可能です。
本記事では猫エイズの基礎知識や予防方法、罹患した場合の対処法を解説します。エイズ感染に関する不安を感じている人はぜひ参考にしてください。
もくじ
猫エイズは、人が感染するエイズとさまざまな面で違いがあります。どういう病気なのか理解するために、以下の点を確認しましょう。
それぞれ詳しく解説するのでご参考にしてください。
猫エイズとは、「猫免疫不全ウイルス」によってもたらされる、猫特有の感染症のひとつ。人間のエイズ同様、免疫機能の低下を引き起こし、あらゆる活動に影響を及ぼします。
初期症状は軽微なものですが、末期になると重い症状に発展し、最終的に死に至らしめる非常に危険な疾患です。
症状の進行に関しては、末期に至るまで3年から10年ほどかかり、罹患したとしても、発症する前には別な死因で死亡していることも。
また無症状もしくは症状が軽微である期間が長く、発覚したときには末期であるケースが多々あります。
そして人間のエイズとは異なり、性行為でなくケンカをとおして感染拡大するのも特徴です。
(引用:さがみはらねこの病院)
なお、猫エイズが人間にうつることはありません。
人間がエイズに感染する原因となるのは、HIVウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)です。
一方で猫エイズの原因はFIVウイルス(猫免疫不全ウイルス)であり、猫もしくはそれに近い生物にしか感染しません。
したがって、人間が猫エイズに感染することはなく、対策は不要です。
猫エイズの感染経路は、ほとんどが以下のような「ケンカ中の噛みつき」です。
すでにFIVウイルスに感染している猫(以下、保菌猫)に噛みつかれ、傷口から唾液が侵入することで感染拡大します。空気感染は起こりません。
交尾による感染も考えられますが、ケンカほど多くはないとされています(参考文献:ルナ動物病院)。舐め合いでもうつることがあるようですが、それも一般的ではありません。
飼い猫が猫エイズに感染するとしたら、ほとんどの場合野良かつ保菌猫に噛みつかれるケースでしょう。後述するようにその経路に対策しておけば、猫エイズ感染のリスクはほとんど回避できます。
ただし、猫エイズは遺伝子雨る点に注意してください。保菌猫が出産した場合、子世代が生まれながらに保菌猫である可能性があります。
猫エイズの症状と進行は、以下4つのステージに分類されます。
それぞれのステージの期間と、症状の進行に関しては下図を参考にしてください。
先ほどのとおり、猫エイズはゆっくりと進行するのがわかります。特に無症状期が長く、数年もしくは10年近く続くことも珍しくありません。
また急性期や持続性リンパ節症期では症状が軽微で、「体調が悪いと隠れる」という猫の修正も相まって、感染が発覚しにくい特徴もあります。
発見と根治が困難な猫エイズに対しては、とにかく感染予防するのが大切です。その方法として以下が挙げられます。
ふたつの予防法を実践すれば、猫エイズの発症はほぼ確実に避けられます。
感染が疑われる場合は、とにかく検査を受けるのが重要です。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
猫エイズのリスクを避けるためには、とにかく予防ワクチンを受けることです。これは動物病院にて、1回あたり4,000円程度で受けられます。
ただし1回だけの接種ではいけません。以下のようなスケジュールで継続接種する必要があります。
なお猫エイズ予防ワクチンは、一般的な混合ワクチンには含まれていません。別途接種が必要である点に注意してください。
完全室内飼育するのも、予防するうえで大切です。
ワクチン接種は強力な予防法ですが、それでも100%の確率で感染を防げるわけではありません。接種を忘れていて、抵抗力が一時的に失われる、といったこともあるでしょう。
そのためには完全室内飼育にして、保菌猫と接触する可能性を減らすことが大切です。
なお完全室内飼育に関しては、多くの獣医師や動物愛護団体が、その必要性を訴えています。
完全室内飼育により、事故、怪我、猫エイズに限らないあらゆる感染症のリスクの大部分を避けられるようになります。ぜひ一度、室内での飼育への切り替えを検討してみましょう。
なお、完全室内飼育にすると寿命が伸びるというデータもあります。
(引用:一般社団法人ペットフード協会)
一般社団法人ペットフード協会の調査によれば、完全室内飼育されている猫は、そうでない猫と比較して2〜3年ほど寿命が長いのがわかります。
ともに過ごす時間を伸ばしたいなら、完全室内飼育に切り替えたほうがよいでしょう。
猫エイズを発症しているか確認するためには、とにかく動物病院で検査を受ける必要があります。費用は4,000円から5,000円程度です。
ただし猫エイズの検査は、子猫に対しておこなう場合、検査結果の信頼性が低い点に注意してください。
NPO法人ライフボート中部の見解によれば、生後4ヶ月の子猫の猫エイズ感染を検出できる確率は60%とのこと。
(引用:NPO法人ライフボート中部)
確実な結果を得るには、検査を一回で終わらせる、獣医師の指定するスケジュールと回数で再検査する必要があります。正確に発症の有無を判断するためにも、きちんと指示にしたがって検査を受けましょう。
猫エイズの完全な治療法は確立されておらず、根治は期待できません。したがって少しでも進行をおさえたり、苦痛を和らげたりする方向で飼育することになります。
栄養バランスに配慮する
ストレスが溜まらないようにする
多頭飼いの場合は陰性猫にワクチンを接種させる
猫エイズ治療を受ける
このように対処することで、猫エイズによる影響をおさえられます。うまくいけば、無症状のまま天寿をまっとうできるかもしれません。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
猫エイズに感染しているなら、まず栄養バランスには十分配慮しましょう。これでウイルスのはたらきをある程度おさえれるからです。
猫エイズは、ウイルスによって免疫機能を攻撃することを示します。つまり十分な栄養を摂取すれば免疫力が高まり、症状を軽くしたり、発症を遅らせたりできるわけですね。
免疫力を高めるには、肉や魚などに含まれる動物性タンパク質が必要です。ドライフードだけでなく、魚肉やささみのおやつを与えるなどするとよいでしょう。
(引用:Amazon)
「ペッツプラス」のように、免疫力向上を目的としたサプリメントも販売されています。やや高額なケースもありますが、余裕があればこういったものも与えるとよいでしょう。
ストレスが溜まらないように配慮するのも重要です。これに関しては、多くの獣医師や動物愛護団体がその重要性を説いています。
(引用:新潟県)
新潟県をはじめとした多くの地方自治体も、上図のように主張します。ストレスを溜めないためには、以下のような取り組みが必要です。
こういったことができていれば、免疫力を保護し、猫エイズの症状の進行をおさえられるでしょう。
多頭飼いしていて、陰性猫がいる場合、ワクチンを接種させる必要があります。これにより、じゃれあいやケンカの際の噛みつきによる感染を予防できます。
猫同士が仲良くしていても、上記のように激しく噛みつき合うことはあるものです。
これでは、いつ感染してもおかしくありません。陰性であるうちにワクチンを接種しましょう。
また可能であれば、保菌猫と陰性猫が直接接触しないように飼育したいところです。
根治はできないものの、以下の治療を受けて、寿命を伸ばしたり症状を緩和したりすることは可能です。
インターフェロン注射は、猫エイズの原因である猫免疫不全ウイルスの増殖を遅延させます。したがって、寿命の延長効果が期待できるわけですね。
ステロイド投与は、猫エイズの症状である口内炎や貧血の改善や、全般的な体調回復などを目的とします。
ただしこれらの治療には副作用として嘔吐や食欲不振、糖尿病などが挙げられています。獣医師と相談のうえ、適切な頻度で治療を実施するようにしましょう。
本記事では猫エイズに関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。
発症後の寿命や見分け方に関しては、特に気になる人が多いようですね。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
猫エイズ発症後の寿命に関しては、有識者の見解にバラつきがあります。
三ツ池動物病院は「保菌猫の50%が、無症状のまま天寿をまっとうする」とも述べています。一方で関内どうぶつクリニックは、以下のような見解を示していました。
(引用:関内どうぶつクリニック)
まず、発症した94%の猫は、3年生存します。65%は6年ほど生きるようす。
一方で感染して3ヶ月強で亡くなるケースもあるとのこと。いずれにせよ陰性である場合と比較して、程度の差こそあれ寿命が縮む点は変わりません。
猫エイズにかかっているかどうか確実に判断するには、動物病院での検査を受けるしかありません。
ただし可能性があるかないかを判断するのみであれば、以下3つの方法があります。
野良猫に噛みつかれた痕がある時点で、猫エイズに感染している可能性があります。その場合はただちに検査を受けましょう。
なお野良猫側が保菌猫がどうかを見分けるのは困難です。ただし長く生きていると推測されたり、体の傷が多かったりするなら、ケンカで噛みつかれている回数も多いと判断できます。
たとえば上図の猫は成猫であり、これまでに何度もケンカしているでしょう。さらに左耳と左目上にケガがあり、みけんには古い傷跡のようなものが見えます。
こういった猫は、そうでない野良猫と比較して保菌猫である可能性は高いでしょう。
結論からいうと、犬にも人間にも感染しません。
猫エイズは猫免疫不全ウイルスによって起こりますが、このウイルスに感染しうるのは猫だけです。
犬に関しては、HIV、FIVに該当するウイルスがなく、したがって犬エイズ自体が存在しません。
したがって犬猫を同時に飼育していたとしても、犬と猫の間での感染拡大を心配する必要はありません。ただし猫を多頭飼いしていた場合は、ケンカやじゃれあいをとおして感染する可能性があるため、隔離や予防などの対処が必要です。
子猫が猫エイズになった場合の症状は、大人の猫のそれと大きな違いはありません。ただし急性期のリンパの腫れや発熱は、体力がある成猫と違って大きな負担やリスクになりえます。
それが原因で体調を大きく崩したり、何らかの後遺症が残ったりするかもしれません。もし子猫が猫エイズの症状を呈したなら、動物病院で十分な治療や処置を受けるようにしましょう。
また生まれながらにして保菌猫である場合は、今後の成長においても健康管理には十分な配慮が必要です。またステージの進行速度によっては、長生きできない可能性がある点も知っておきましょう。
本記事では、猫エイズに関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
猫エイズは、人間のそれと同様、寿命を縮めかねない重大な感染症です。
また感染経路はケンカによる噛みつきであり、ワクチンを打たずに室外を歩かせたいたのでは、十分に感染する可能性があります。
猫エイズの発症を避けるためにも、ワクチン接種と完全室内飼育を徹底しましょう。
発症してしまった場合は、可能な限り寿命が長くなるように、健康的な生活が送れるように配慮しましょう。
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