猫には帰巣本能が備わっている?何キロ先から帰って来れるのか?

  • 「猫の帰巣本能はあるのか?」
  • 「脱走したり迷子になったりしても、戻って来れるのか?」
  • 「どうやって脱走した猫を探せばよいか?」

このような疑問を持っている人は多いでしょう。

猫には、犬ほどではないにせよ、帰巣本能が備わっています。そこには、猫ならではの特殊な能力がはたらいています。

また、帰巣本能にしたがって、脱走した猫が帰ってくることも。

今回は、猫の帰巣本能に関して詳しく解説します。合わせて、猫が脱走、迷子になってしまったときの対応も紹介しているので参考にしてください。

猫の帰巣本能の強さと無事に帰ってきた事例

冒頭のとおり、猫にはある程度の帰巣本能がそなわっています。帰巣本能には強弱がありますが、猫の場合、その度合いはおおむね以下のとおり。

  • 室外で飼育している場合、自力で帰ってこられる
  • 多少、遠出してしまっても、多少迷いながら帰って来れる
  • 時間をかければ、相当遠く離れたところからでも自宅に戻れる

ただし、室外に出る習慣がない場合は、帰巣本能がはたらきにくい部分もあります。また、何十キロも離れた場所に行ってしまった場合は、戻って来れないことも少なくありません。

犬などは、相当離れたところからでも帰って来れますが、猫にそれほどに強い帰巣本能は備わっていない、といえるでしょう。

とはいえ、猫のなかにも帰巣本能が強い個体がおり、相当な距離があっても自宅に帰ってくることがあります。下記では、その事例に関して解説します。

  • 秩父と長瀞までを歩き抜いたドボラ
  • 320kmの距離を辿って帰ってきたホリー

それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。

秩父と市川までを歩き抜いたドボラ

非常に古いケースですが、埼玉県の西端の秩父・長瀞から、千葉県の西端の市川までを歩き、戻ってきた事例があります。

「猫の歴史と奇話(1992)」によれば、ある女性に飼われていたドボラという猫が、秩父・長瀞から95kmほど歩き、最終的には市川の自宅にたどり着いたとのこと。

出典:読売新聞

外に出る習慣がある猫の移動範囲は、3~6kmほどといわれます。しかしその範囲を大きく超えても、帰って来られるほどの基礎本能を発揮する可能性があるといえます。

一方でドボラは長期の移動で力を使い果たし、到着後まもなく急死したとのこと。

猫と再会し、いつもどおりの暮らしとを取り戻すには、長距離移動がともなわないよう、飼い主から迎えに行くのが大切といえそうです。

320kmの距離を辿って帰ってきたホリー

出典:ナショナルジオグラフィック

海外では、320kmもの距離を移動して、自宅に帰ってきた例があります。

2013年、とある家庭で暮らしていたホリーは、フロリダ州のデイトナで脱走しました。

マイクロチップを持たせていましたが、途中で発信が途絶え、飼い主は生存を諦めました。

しかしその後、ホリーは320km離れてウエストパームビーチまで歩いて自宅まで戻っています。なお320kmは、東京-名古屋間の直線距離とほぼ同等です。

ホリーの肉球はボロボロになっており、誰かに運ばれたのではなく、自力で歩いてきたことがわかりました。

このことから、猫は時としてすさまじい帰巣本能を発揮することがわかります。

猫の帰巣本能がはたらかず帰って来れないパターン

猫は帰巣本能を持っているものの、それがはたらかず、帰って来れないこともあります。たとえば以下のパターンが考えられるでしょう。

  • その個体が持つ帰巣本能では帰るのが不可能なほど離れてしまった
  • 帰宅するまでの道のりが険しく、歩けなかった
  • 帰宅する方向がわかるものの、途中で力尽きてしまった

また、居心地のよい場所を見つけると、帰宅するのをやめてしまうことがあります。

たとえば帰り道で、安全な寝床や食料が豊富な場所を見つけてしまうと、そこを新しい定住地とすることがあります。

猫が迷子になった時の対処法

猫が迷子になったとしても、諦めてはいけません。

帰巣本能がはたらき、自力で帰ってくる可能性はあります。

また、飼い主による努力により、再会できる可能性を高めることも可能。迷子になったときは、以下の方法で猫を探しましょう。

自宅周辺の隠れ場所になりそうなところを探す 警察や動物愛護センターに連絡する SNSに迷子猫の情報を掲載する チラシやポスターを作成して配布する

それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。

自宅周辺の隠れ場所になりそうなところを探す

まず、自宅周辺の隠れ場所になるところをくまなく探しましょう。以下に一例を示します。

  • 家の軒下
  • 草むら
  • 室外機の裏側
  • 家と家の境界線
  • 自動車の下
  • 木の上

猫は遠くに行くよりも、隠れ場所を見つけてそこに潜むのを好む傾向があります。隠れそうな場所を探せば、意外と早い段階で見つけられるかもしれません。

また、脱走したと思っていたら、家の中の狭い場所に隠れている場合もあります。そちらも確認しましょう。

警察や動物愛護センターに連絡する

警察や動物愛護センターに連絡、届出を提出するのも大切です。

警察では、遺失物届を提出できます。そうすれば、各所の交番や警察署、動物愛護センターや保健所と連携し、発見時に連絡を得ることが可能。

貴重な情報源になるので、かならず届けを出しましょう。

また、動物愛護センターにも連絡しましょう。警察と同じく、発見時には連絡が得られるようになります。センターは、「居住する都道府県+動物愛護センター」で検索するとヒットします。

なお「おおさかワンニャンセンター」など、名称が微妙に異なる点に注意してください。

そもそも、すでに警察や動物愛護センターで保護されている可能性もあります。かならず、届出の提出や連絡おこないましょう。

また、以下のように公式サイトで猫の保護情報を参照することも可能です。

出典:川崎市

SNSに迷子猫の情報を掲載する

また、SNSに迷子猫の情報を掲載するのも有効です。

SNSを通じて、猫の発見情報が得られるかもしれません。

このように迷子になった経緯や日付、場所を記載し投稿しましょう。

また、ハッシュタグ「迷い猫」「地名」などを記載すると、より多くのユーザーに投稿を見られやすくなります。

X(Twitter)では、猫を預かっている報告もあり、そこから再会につながることも。

SNSは、迷子になった猫を探すうえで非常に役立ちます。かならず利用しましょう。

チラシやポスターを作成して配布する

また、チラシやポスターを作成して配布する方法も考えられます。これには以下の効果があります。

  • 迷い猫の目撃情報があったとき、情報提供を受けられる
  • 各世帯が、敷地内を確認してくれる
  • 捜索の協力者を見つけられる可能性がある

ぜひチラシやポスターを掲載しましょう。

チラシは、町内会や地域のお店などで許可を得れば設置できます。

ポスターを掲示する場合は、かならず掲載場所の所有者に許可を取りましょう。

猫の帰巣本能がはたらく4つの要素

なぜ、猫が帰巣本能を発揮できるのか、まだわかっていません

ただ、以下の4つが関係しているといわれます。

  • 体内磁石がはたらく
  • 感覚地図を持っている
  • 方向を理解する
  • 神経細胞を持っている
  • 太陽の位置で方向を割り出している

これらの要素が絡み合い、総合的に帰る場所を推測できているとみられます。

それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。

体内磁石がはたらく

まず、体内磁石がはたらいている可能性があります。体内磁石とは、地球の磁場を感じ取る力のこと。

猫は体内に磁気受容体というものを備えています。これが地球の磁場を感じ、自宅の大まかな位置を特定しているとする説があります。

猫の記憶力が理解力を考えれば、自宅に帰る道筋を把握するのは、通常むずか強いはず。

しかし、大まかな位置や方向を特定できるのは、体内磁石のはたらきがあるのかもしれません。

感覚地図を持っている

また、感覚地図を持っていることも、帰巣本能の発揮に関係するといわれています。

感覚地図とは、周辺の風景や匂い、音などの情報によって構築された、イメージ上の地図のこと。わかりやすくいうと、土地勘がこれに該当します。

脱走する前は、おそらく自身が住んでいた場所の周辺の感覚地図を有しています。

脱走した猫はその地図の外側に出ると「帰らなければいけない」ことを自覚するでしょう。

ちなみに、感覚地図を構成する情報のひとつに「ひげで触った感覚や記憶」があります。

ひげから得られる情報を用いて、住宅の間取りや、屋外の道の作りを覚えられるとされています。

方向を理解する神経細胞を持っている

さらに、おおまかに方向を理解する神経細胞を持っている可能性も指摘されています。

一般社団法人アニマリアの見解によれば、この細胞がはたらくことで、視覚情報に頼らず方向を察知できるとのこと。

また、暗闇でも帰ってきたり、道に迷わなかったりするのも、この神経細胞がはたらいていると見られます。

なお、猫の大脳皮質に含まれる神経細胞は、動物のなかでは比較的多く、犬の2倍に相当します。すなわち認知能力が高い点が、方向の理解を容易にしているのかもしれません。

太陽の位置で方向を割り出している

また、太陽の位置で自宅の方向を割り出しているのかもしれません。

猫は、太陽の位置で、時間や季節を判断しているといわれています。

仮に自宅から離れた場所に移動すると、太陽の位置が普段よりもずれて認識されるでしょう。そのずれが小さくなる方向に移動することで、棲家に戻れるのではないかと考えられています。

これは、伝書鳩などが持つ能力とされます。鳩の帰巣本能はすさまじく、1000km先から元の場所に戻ることも可能。

猫にも同様に、太陽の位置で帰る場所を判断する力が備わっているのかもしれません。

猫の帰巣本能に関するよくある質問

本記事では、猫の帰巣本能に関して解説しました。

ここではよくある質問に回答します。

  • 猫が戻ってくる確率は何%か?
  • 猫の脱走を防ぐ方法は?
  • 引っ越し先で帰巣本能はたらくか?
  • どうしても猫が見つからない場合は?

それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。

猫が戻ってくる確率は何%か?

研究によってばらつきはありますが、迷子猫の8割は帰ってくると考えて問題ありません。つまり、迷子になっても帰って来られる可能性は十分にあります。

またこの確率は、飼い主の努力によってさらに高められます。

たとえばSNSで情報発信したり、チラシを配ったりして、可能な限り再開の可能性を高めましょう。

猫の脱走を防ぐ方法は?

猫の脱走を防ぐ方法として以下が挙げられます。

  • ベランダにネットを取り付ける
  • 脱走防止用柵を取り付ける
  • 玄関を開閉する際、逃げ出さないようにする
  • 天窓や内窓など、脱出経路になりうる部分はすべて施錠する

猫は、思いもよらないところから、ふとしたタイミングで脱走します。気をつけていても、ドアや窓を開閉するときに出て行くかもしれません。

そのようなトラブルを避けるため、そもそも脱出経路をふさいでしまうのが重要です。

なかでも脱走防止用柵は、非常に役立ちます。

近年ではデザイン性が高いものも販売されるようになりました。うまく活用しましょう。

引っ越し先で帰巣本能はたらくか?

引っ越したばかりでは、帰巣本能がはたらかない可能性が高いです。

猫の帰巣本能がはたらくのは、まだ研究途上であるものの、体内磁石や感覚地図、神経細胞などから得られる情報があるからです。

しかし引っ越したばかりでは、体内磁石や神経細胞ははたらくものの、感覚地図はまだ完成していません。つまり、大まかな方向はわかるものの、詳しい位置までは特定できないと考えられます。

引っ越し先で脱走したら、帰ってくるのはむずかしいかもしれません。

引越しの際には、猫が逃げ出さないように対策するのが大切です。また、移動中の車内からも飛び出さないように注意しましょう。

どうしても見つからない場合はどうすれば?

どうしても見つからない場合は、ペット探偵を使う方法があります。

ペット探偵とは、行方不明になったペットを見つける専門サービスです。

プロの知識と技術で、脱走した猫を探してくれます。その捜索能力は非常に高く、個人で探すよりもよい結果を期待できるでしょう。

ぜひ選択肢のひとつに入れておきましょう。

まとめ:猫の帰巣本能は強いが飼い主の捜索努力も大切

本記事では、猫の帰巣本能に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。

  • 猫の帰巣本能はそれなりに強く、多少遠いところからでも帰って来れる
  • 中には都道府県をまたいで帰ってきた猫も
  • ただし帰巣本能がはたらくかどうかは読めないので、過信は禁物
  • 飼い主のほうから捜索するのが大切
  • 自宅周辺の隠れ場所を探したり、SNSで迷子猫の情報を発信したりするのが大切
  • 帰巣本能は未解明な部分が多いが、体内磁石や感覚地図が活かされていると見込まれる

猫はある程度、自力で帰ってくる力を持っています。ただし、たとえば鳩や犬ほど強い帰巣本能はありません。

飼い主のほうから、迷い猫を探しに行く努力をするのが大切です。

迷い猫は、8割ほどの確率で帰ってくるといわれます。諦めずに捜索を続けていきましょう。

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