2024.03.31
このように思っている人は多いのではないでしょうか?
TNRは、賛否はあるものの、猫の健康や安全を保ちつつ、また人間社会との関わりを正常化するうえで重要な施策・事業として知られています。
しかしTNR、そしてその結果に現れる「さくら猫」に関しては、まだよく知られていません。
本記事ではTNRの具体的な内容や「さくら猫」の定義などを解説。
またTNRを実施する方法やそのメリットなどに関しても述べます。ぜひ参考にしてください。
まずはTNRに関して以下の点を理解しましょう。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
TNRとは、「野良猫を捕獲(Trap)し、不妊・去勢手術を実施し(Neuter)、その後自然に返す(Retrun)」ことを意味する単語、もしくはその活動自体を指します。
主に公益財団どうぶつ基金などによって活動が進められています。
(引用:公益財団法人どうぶつ基金)
基本的にはどうぶつ基金が主体となって運営する活動で、それに賛同して不妊・去勢手術を実施する「協力病院」が存在します。
捕獲に関しては、行政やどうぶつ基金がおこなうこともありますが、一般人が実施し、その後手術を受けさせることも可能。この点に関しては後ほど詳しく解説します。
TNRの具体的な目的は、殺処分を減らすことにあります。
日本では、殺処分される猫の頭数の多さが問題になっています。
環境省の統計資料によれば、令和4年度の殺処分数は9,472頭。政府や各自治体、数々のNPO法人が殺処分ゼロを目指して活動していますが、まだ十分な成果が出たとは言えません。
殺処分されるに至る経緯はさまざまですが、元々は野良猫だったケースが多々ありました。
彼らは不妊・去勢手術を受ける機会がない一方、高い繁殖能力を有しています。よってときおり、野良猫が地域に局所的に大量繁殖し、騒音や糞害などの問題を引き起こし、やむをえず行政が殺処分するわけです。
しかしTNRを実施すれば繁殖数をコントロールし、殺処分数を減らすことが可能、という考えのもとで活動が継続されています。
TNRは、以下のステップで実施されると考えてください。
それぞれのステップの詳細を解説します。
第一段階として、まず猫を捕獲(Trap)します。
猫は俊敏かつ警戒心が強く、追いかけるなどして捕まえるのは困難です。子猫期などをのぞいて、素手で捕獲できるケースは滅多にありません。
そこで下図のような捕獲器を使い、罠にかけ、捕獲します。
主に奥部に餌を置き、猫を誘い込みます。画像右部にある板を踏むとシャッターが降り、閉じ込めることが可能。
これがTrapの段階にあたります。
捕獲後、基本的には即日で不妊・去勢手術を実施します。これは主にどうぶつ基金の協力病院にておこなわれるものです。
不妊・去勢手術は全身麻酔を施したうえで進められるため、麻酔注射以外に目立った苦痛はありません。ただし捕獲、手術を受けること自体が大きなストレスになるため、すみやかな処置がおこなわれる傾向にあります。
なおTNRの特徴として、(主に猫から見て右の)耳にV字状の切り込みを入れる点が挙げられます。
(引用:公益財団法人どうぶつ基金)
これは「TNRによって不妊・去勢手術が完了したこと」を示すマーク。さくらの花びらのように見えることから「さくら耳」、その処置を受けた猫を「さくら猫」と呼称します。
これにより「TNRが施された猫と、そうでない猫」を見分けられるようにします。
去勢・避妊手術が完了した同日から数日以内に、もともと住んでいた地域に戻されます。すでに生殖能力を喪失しているため、繁殖に関与することはありません。
Returnのあと、ボランティアや近隣住民による見守りがおこなわれます。また体力が低下していることなどに鑑み、餌やりを実施することも。
異常がなければ、見守りは終了し、通常の野良猫同様に自由に暮らします。ただし地域によっては、近隣住民全体で共同で身守られる「地域猫」になります。
さくら猫を保護、つまり家へ連れて帰ることに、法的な問題はありません。 ただ、周辺地域の方々に、保護したい旨を事前に伝えて相談するとよいでしょう。
さくら猫であるなら、「その周辺地域の誰かもしくは複数が、みんなで見守るために、その猫をさくら猫にした」背景があるかもしれません。 つまり何の相談もなく連れて帰ると、周辺地域の住民からの反感を買うかもしれません。
なかには、さくら猫との触れ合いを生活上の喜びとしている人もいます。そういった気持ちを傷つけぬよう、連れて帰ってよいか事前に確認しましょう。
また難色を示された場合は、トラブル回避のため、保護しないことを推奨します。
TNRを実施することには、以下のようにいくつかのメリットがあります。
いずれも猫と人間(地域)にとって重要なメリットです。
TNRに協力するかどうか検討している人にとっては大切な情報なので、ぜひ参考にしてください。
最大のメリットは、不要な繁殖をおさえ、殺処分を回避できる点にあります。
先ほど、日本では大量の殺処分数が問題になっていると解説しました。その主たる原因のひとつが、野良猫同士の交配による過剰な繁殖です。
しかしTNRをおこなうことで生殖行動を制限し、行政によって処分される猫の誕生をある程度防止できます。したがって、殺処分数を減らすことが可能。
ただしこれは、裏を返せば、「その猫が子孫を残せる可能性を奪う」ことを意味します。その点に問題を感じ、TNRそのものに反対する人も少なくありません。
また後述のように「TNRが効果を発揮しないケースや地域」もあるので、その点にも注意してください。
関連記事▶︎猫の去勢手術はいつ受けるべき?費用・手術内容・術後のケアも解説
TNRを実施した地域では、騒音やマーキングに関する猫害をおさえることが可能です。
野良猫は、基本的には目立たないように生活する生き物ですが、繁殖期はそうではありません。あちこちを動き回ったり、夜中に大声で鳴いたりします。
たとえば鳴き声ひとつとっても、相当なボリュームです。
それが近隣住民の迷惑になるケースは決して少なくありません。
しかしTNRで去勢・避妊手術を受けた場合、少なくとも繁殖期の活発な行動は抑えられ、猫害が発生しにくくなります。
これはその地域に住まう人々にとって大きなメリットといえるでしょう。
関連記事▶︎発情期の猫の鳴き声が気になる!うるさいときの対策とは?
さらに野良猫の世話をしやすくする効果もあります。
野良猫は、TNRを経て、上述のとおり繁殖期特有の行動が制限され、おとなしくなります。大声で鳴いたり、攻撃的になったりする頻度は大きく落ちるでしょう。
そうすると餌やりやトイレの管理、地域住民での見守りなどがやりやすくなります。また猫に対する悪感情も薄れ、地域全体で見守るような方向に動いていくことも。
以下の理由から猫自身が長生きできるようにもなります。
発情期を迎えるのは、猫の寿命を縮めることと同義でもあります。しかしTNRを経たあとでは発情自体がなくなるため、上記のリスクすべてを避けることが可能。
結果として、従来よりも長生きしやすくなります。
TNRはどうぶつ基金とその協力病院、そして地域住民の手によっておこなわれます。つまり、個人が活動に参加することが可能です。
その手順はおおむね以下のとおり。
それぞれのステップを解説するので参考にしてください。
まず、どうぶつ基金公式サイトから、避妊・去勢手術を実施できる協力病院を探しましょう。
(引用:公益財団法人どうぶつ基金)
念の為電話連絡して、手術を実施しているか、診察時間はいつか確認しておきましょう。
なお手術費用(20,000円〜30,000円が相場)は、捕獲した側の負担になるので注意してください。
なお、TNR手術に関して、予約制が取られるケースはほとんどありません。これは、次の段階である「手術前に野良猫をつかまえる」ことがむずかしく、予約制にしてもキャンセルの連続になることが予想されるからです。
続いて、手術日前夜もしくは当日朝に、対象の野良猫を捕獲します。
素手で捕まえるのはまず不可能であるため、以下のような捕獲器を使わなければいけません。
これはAmazonなどで、数千円ほどで購入可能です。
また近隣のNPO法人が、捕獲器を貸し出しているケースもあります。一度「動物愛護団体+地域名」で検索し、レンタルできないか確認しておくとよいでしょう。
捕獲に成功した場合、ただちに協力病院に連絡して、手術が必要である旨を伝えましょう。
協力病院であれば、休診日もしくは極端な多忙日でない限りは対応されます。
手術を受けられるなら、なるべく早く来院・来所しましょう。
なぜなら野良猫にとって捕獲されている状態は強烈なストレスになるからです。そのあと手術においてある程度の苦痛を経験することも踏まえれば、やはり負担をかけるべきではありません。
基本的に協力病院による手術は即日で完了します。
終了の連絡が来たら、ただちに迎えに行きましょう。
地域に戻ってきたら、TNRのRに当たるReturn、つまり「元いた場所に戻す」ステップを実行します。
その後は可能な限り、地域住民で猫のようすを見守りましょう。特別問題がなければ、野良猫として完全に離脱させる、あるいは地域猫として保護する方針に切り替えます。
本記事ではTNRとさくらねこに関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。
TNRは、一般人からすれば知名度が高いものではありません。また、その効果自体を疑問視する声もあります。それらから派生する質問に対して回答するので参考にしてください。
「さくら猫を処分してはならない」という法律があるわけではありませんが、少なくとも殺処分される可能性はきわめて低いでしょう。
多くのさくら猫は、「地域住民から愛されることを望まれ、TNRを受けた」という経緯を持っており、誰かがわざわざ殺処分依頼を出すとは考えにくいです。
そして去勢・避妊手術を受けているため、「処分の必要がある」と思われる機会も、まずないでしょう。
さくら猫と人間の暮らしに問題が起こるとは考えにくく、殺処分に至る可能性は極めてい低いでしょう。
そもそも市役所は、TNRを受けていない通常の野良猫の殺処分に対して極端に消極的です。
最大の要因として、「TNRによる繁殖数の低下が認められなかった調査結果がいくつかあること」が挙げられます。
たとえば「猫の島」として知られる御蔵島の大規模なTNR事業では、2005年から2015年にわたっておよそ400匹のTNRがおこなわれました。
(引用:さんかくの野良猫餌やり被害報告)
しかし2007年から2012年のあいだに野良猫の頭数は200匹ほど増えたという試算が出ています。
そうすると、TNRのメリットである繁殖数の低下に説得力がなくなります。そのうえで「猫の尊厳を傷つける」「耳をカットするのがかわいそう」という負の面がクローズアップされ、反対されるケースが多々あります。
ただし御蔵島の反省を活かし、TNRの対象となる猫の頭数を増やすなどすれば、期待された効果が得られるなどの改善は見込めるでしょう。
このふたつの活動はよく似ていますが、以下のように実施者や活動内容がやや異なります。
<地域猫活動>
地域住民が自発的に結成したグループにより、去勢・不妊手術や餌やりやトイレ管理のルールづくり、その実行をおこなう。
<TNR活動>
どうぶつ基金とその協力病院、地域住民により野良猫の去勢・不妊手術をおこない、殺処分数の低下を目指す。
地域猫活動にTNR活動が内包されることはありますが、その逆はありません。
本記事では猫のご飯に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
TNR活動は、どうぶつ基金が中心となっておこなわれる、野良猫に対する不妊・去勢手術を実施する活動のこと
TNRは、賛否両論あるものの、猫の殺処分数を減らすうえで有効な取り組みだとされています。
本文中でも述べたとおり、猫の殺処分数は令和4年どでも10,000頭弱におよび、未だ多くの命が処分されているのが実情です。
また野良猫の繁殖によって、騒音やマーキングなどの被害を受けているケースも少なくありません。
TNRには、こういった問題を一挙に解決できる可能性があります。もし必要があれば、近隣住民と協力したうえで、TNRに参加できないか検討してみるのがよいでしょう。
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