野良猫の餌やりがダメな理由は?ほんの気まぐれで地域崩壊?

  • 「野良猫に餌をあげたいけど問題になるのか」
  • 「なぜ餌やりが禁止されているのか分からない」
  • 「地域で餌やりトラブルが発生していて困っている」

このような疑問を持っている人は多いのではないでしょうか?

野良猫への餌やりは、時として深刻な地域問題に発展します

特に異常な繁殖の問題は非常に深刻。猫の繁殖力は極めて高く、適切な管理なしでは地域全体の生活環境を悪化させます。

今回は、野良猫への餌やりがダメな理由と、地域と猫が共生するための正しい方法について詳しく解説します。

野良猫に餌をあげてはいけない主な理由

野良猫への餌やりはやさしい行為に見えますが、実は深刻な問題を引き起こすものです。

ここでは、餌やりが禁止される以下の理由を解説します。

  • 過剰な繁殖や定住につながる
  • ゴミ・糞尿などの衛生問題に発展する
  • 野良猫の健康を害するおそれがある
  • 地域コミュニティ内でのトラブルに発展する

それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。

過剰な繁殖や定住につながる

まず、過剰な繁殖が問題として挙げられます。

猫の繁殖力は非常に強く、あっという間に異常な個体数に到達するかもしれません。

猫は1回の出産で平均4〜8頭を産み、また年間で4回ほどそれを繰り返すことが可能です。

すなわち、理論上では1頭のメス猫が3年後には2,000頭以上に増えるかもしれません。

また、餌やりは猫を特定の場所に定住させます。安定した食料源があると猫は移動しなくなり、またほかの地域からも流入する可能性があるでしょう。

そうすると、通常は別々に暮らすオスとメスが同じ場所に定住し、さらに繁殖が加速します。

この状態になると、行政が介入しなければいけないほどの個体数に到達するかもしれません。

ゴミ・糞尿などの衛生問題に発展する

また、ゴミや糞尿に代表される衛生問題も心配されます。

餌やりで複数の猫が集まると、周辺地域は無秩序な排泄が増加します。

公共の場はもちろん、個人の敷地にも衛生問題が生じるかもしれません。

匂いの問題も、よく指摘されます。糞尿による悪臭は、特に夏季に腐敗が進み、近隣住民の生活環境を著しく悪化させます。

さらには食べ残しの腐敗による悪臭、それに寄ってくる害虫の発生などもリスクとしてあげられます。

野良猫の健康を害するおそれがある

また、野良猫の健康を害する恐れもあります。

人間にとって一般的な食べ物は猫にとって有害であることが多いです。

たとえば、牛乳に含まれる乳糖は、乳糖分解酵素(ラクターゼ)をわずかにしか持たない猫にとっては危険です。

また、腐敗したものを食べてウイルス性の疾患を発症するなどの可能性もあるでしょう。

さらに定期的な餌やりに依存すると狩猟能力が衰えます。餌やりが中断された場合、自力で生きていけなくなる危険性があります。

地域コミュニティ内でのトラブルに発展する

野良猫の餌やりは、近隣トラブルなどの深刻な問題にも発展しえます。

敷地内での排泄、発情期の鳴き声による睡眠妨害、自動車の汚損などが想定されます。

結果として、地域コミュニティ間での人間関係が悪化する、あるいはそこで生活する人々が不快な思いをすることが増えてしまいます。

住民間の対立が激化した結果、管理組合での対立や暴力事件に発展した事例もあります。地域の安全や健全な人間関係を守るためにも、安易な餌やりは避ける必要があるでしょう。

迷惑な餌やりで困っている場合の対処法

野良猫餌やりに関するトラブルに直面している場合、段階的な対処が必要です。ここでは、効果的な対処法を解説します。

  • 餌をあげている人に注意する
  • 市区町村役所・役場で問題について相談する
  • 警察に相談して餌やりをやめるよう指導してもらう
  • 弁護士などに相談して法的な対処を実施する

それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。

餌をあげている人に注意する

まず、餌をあげている人に対して直接に注意する方法が考えられます。この段階で餌やりをやめさせられれば、さほど大きな問題にはなりません。

ただし、注意する際には十分な配慮が必要です。

餌やり自体を非難せず具体的な被害事実を冷静に伝えます。感情的な対応はトラブルの原因になるため、絶対にやめましょう。

注意をめぐって、事件に発展した事例もあるため注意が必要です。

また、餌やりをしている人にも何らかの事情があるのかもしれません。その点に配慮しつつも、実際の被害状態をきちんと理解してもらうのが大切です。

市区町村役所・役場で問題について相談する

直接の注意によって改善されない場合は、行政への相談が効果的です。

一般的に相談先として、市町村役所や役場の環境課・生活環境課などが挙げられます。

相談時には具体的な証拠を提出するのがよいでしょう。

被害状況の詳細記録、写真・動画、近隣住民の証言があると、本腰を入れて対応してもらいやすいです。

非常に慎重な対応が必要になりますが、餌やりをやっている瞬間をおさめた動画などがあるとさらによいでしょう。

ただし、行政が動き始めても、ただちに強制的に餌やりをやめさせられるわけではありません。

最初は、動物愛護法25条に基づく指導から始まり、改善勧告、改善命令へと進みます。

勧告や命令とありますが、これには強制力はありません。あくまでも、餌やりをしている人の良心にゆだねられます。

警察に相談して餌やりをやめるよう指導してもらう

行政に相談しても改善しない場合は、警察に相談する方法が考えられます。

ただちに逮捕や連行がなされるわけではありません。ただし、警察の通報が入り、警察官に事情を聴取されたとなれば、餌やりをしている本人も認識を改めるかもしれません。

また前段階で行政に相談していた経緯がある場合は、親身に対応してもらえるケースが多いです。

一暴行・脅迫を受けた場合や器物損壊の被害が明確である場合は、明確な犯罪行為であるため、警察に相談することが必須です。

先述のような被害を証明する証拠を可能な限り揃えて警察に連絡しましょう。

弁護士などに相談して法的な対処を実施する

自治体・警察の対応でも改善がない場合、法的対処を検討します。

特に重大な被害が継続している場合や損害賠償を請求したいケースでは弁護士への相談が必要です。

ただし、ただちに弁護士に有償で相談するのは現実的ではありません。相談段階でも1時間あたり5000円ほどの費用が発生し、実際に裁判を起こすとなれば膨大な時間とエネルギーがかかります。

一方で、法テラス(日本司法支援センター)を利用すれば、収入・資産が一定基準以下の場合、無料で相談できます。

出典:日本司法支援センター

また、1回30分で同じ問題につき3回まで相談することも可能。

やはりここでも、被害を立証する物的証拠などが重要です。きちんと証拠を進め、しっかりと民事責任を追求できるようにしておきましょう。

地域と野良猫の理想的な関わり方

野良猫問題の根本的な解決には、地域全体で組織的に取り組むのが理想です。一方でそれを実現がむずかしい部分もあり、個人レベルで対応せざるを得ないケースも。

ここでは、猫と地域(もしくは個人)が問題なく共存するための理想的な方法を解説します。

  • TNR活動で繁殖を防ぐ
  • 地域猫活動に参加する
  • 正しい餌やりルールを守る
  • 里親探しや譲渡活動を支援する

このような方法があることを知っておけば、トラブル解決の役に立つかもしれません。

TNR活動で繁殖を防ぐ

個人で実施するのは困難ですが、TNR活動で繁殖を防ぐ方法があります。

TNRとはTrap(捕獲)、Neuter(不妊去勢手術)、Return(元の場所に戻す)示し、これを組織的に実施するのがTNR活動です。

TNR

出典:尼崎市

餌やりだけを続けると猫の数は増えてしまいますが、TNRを組み合わせれば「今いる猫だけがその生を全うする」仕組みを作れます。

これにより数年単位で野良猫の数を減らし、地域全体のトラブル防止につながります。

ただし、TNR活動を実施するにはNPO法人の立ち上げや地域の協力が必要であるため、個人で実施するのは困難。

後述するように餌やりのルールを決めるなどして対応するのが現実的です。

地域猫活動に参加する

また、地域猫活動に参加する方法もあります。

地域猫活動とは、地域住民の理解と協力を得て、飼い主のいない猫を適切に管理する取り組み。

不妊去勢手術を行った猫を地域で見守り、増やさないことを前提に世話をしていきます。

地域猫活動協力員の周知用パンフ

出典:足立区

この活動は「一代限りの命を地域で見守る」考え方に基づいており、行政・ボランティア・住民の三者が協力することが基本です。

地域猫活動を導入すれば、野良猫の引き起こす問題を解決しつつも胸像できるようになるでしょう。

ただし、地域猫活動に関しても、個人で実施するのは困難です。先述のTNR活動同様に、NPO法人の立ち上げなどのステップを踏む必要があります。

ただし、先述の足立区の事例のように、地域猫活動協力員として参画するなど、既存の取り組みに合流することは可能です。

里親探しや譲渡活動を支援する

また、野良猫の里親を探す、譲渡活動を支援するといった動きを取ることもあります。

野良猫を捕獲し、譲渡会や保護団体のネットワークにつなげて、里親まで導くという流れが一般的。

このようにすれば、野良猫の引き取り先を確保しつつ、地域でのトラブルを避けることも可能です。これも地域全体で取り組めば、実現できる可能性は残されています。

なお、個人で野良猫を捕まえ、里親につなぐといったことは現実的ではありません。

野良猫を譲渡するにしても、ワクチン接種などを実施する必要があります。また「一度野良猫を捕まえ、何らかの事情で再度野生に返す」ことは、動物愛護法の定める遺棄に該当し、かつ違法行為です。

そのようなことを避けるためにも、個人で野良猫を無計画に捕獲するのはやめましょう。

正しい餌やりルールを守る

餌やりに限定した部分では、やはり地域全体での厳格なルールの遵守が必要です。TNR活動などを実現できれば理想的ですが、地域全体で取り組むのがむずかしいことから、このような対策が現実的です。

前提として、餌やりそのものは違法行為ではありません。しかし、下記動画のように残飯を放置したり、置き餌をしたり、必要以上の量を与えたりすることに問題があります。

一方で、「残飯を残さず立ち去らない」「頻繁に与えてはいけない」などのルールを決めて餌やりすれば、さほど大きな問題にはなりません。

また、餌をあげる場所を限定するといったことでも、ある程度はトラブルを予防できます。

このようにルールをきちんと決めることで、地域における野良猫に関するトラブルを解決に導きましょう。

餌やりの際に与えてはいけないもの

なお、猫に有害な食べ物は多数存在します

このような食べ物は、人間にとっては一般的であるものの、猫にとっては有害です。

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引用:よしだ動物病院

一方でありふれた食べ物であることから、有害性に気づかず餌として与えてしまうケースも。

猫に有害なものを与えてしまわないよう、きちんと理解したうえで餌やりしましょう。

野良猫と餌やりに関するよくある質問

本記事では迷惑な野良猫の餌やりに関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。

  • 野良猫に餌をあげてしまったら?
  • 野良猫に餌をあげなくなったらどうなる?
  • 餌をあげるとしたら何がよい?
  • 敷地内で餌やりをされたらどうすればよい?

それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。

野良猫に餌をあげてしまったら?

野良猫に餌を一度でもあげてしまうと、猫は「ここに行けば食べ物がある」と覚えてしまい、繰り返し訪れるようになります。これが、繁殖や近隣トラブルの原因となりがちです。

もし野良猫に餌をあげてしまったら、基本的には今後それを控えましょう。数度与えた程度では、大きな問題にはなりません。

また、地域のルールに則ったうえで餌やりをしているなら、少なくともその責任を問われることはないでしょう。

特に何もしなくても野良猫は生活できる

野良猫は理論上、餌やりなしでも生存可能です。

人間が与える餌に頼らなくても、自ら小動物や昆虫を捕食する能力を有しているからです。

したがって、「餌を与えない」ことが、猫を苦しめるわけではありません。

むしろ餌を与えて、狩猟本能を弱める、あるいはハンティングの技量を落とすほうが、猫を苦しめる結果につながる場合もあります。

野良猫に餌をあげなくなったらどうなる?

猫は、餌をもらえなくなっても一度餌を与えた場所には数ヶ月間ほどしつこく通い続けます。「ここで餌はもらえなくなった」と確信できた場合、ようやくそこから離れます。

一度「餌をもらえる場所だ」と認識されると、しばらくは周囲に猫が現れるようになるでしょう。

それが、地域でのトラブルを誘発するかもしれません。

餌やりをするなら、やはりルールに則っておこなう、ルールが定められていないなら無秩序にはおこなわないことが大切です。

餌をあげるとしたら何がよい?

どうしても餌をあげるなら、人間の食べ物は避けるべきです。基本的にはキャットフードなどがのぞましいでしょう。

キャットフードなどは、猫にとって有害なものが排されているため、安心して与えられます。

ただし、腐敗などがあると、やはり猫が健康を損なうかもしれません。

あえて餌を与える場合でも、保存状態などには十分に注意する必要があります。

また、猫の餌やりに対して厳しい見方をする人もいます。

地域に対して迷惑をかけない範囲で餌やりをおこないましょう。

敷地内で餌やりをされたらどうすればよい?

敷地内で餌やりされた場合、少なくとも不法侵入が成立します。そのため、ただちに行政もしくは警察に相談する必要があります。

まずは、証拠の収集から始めましょう。

餌やりの日時・頻度、写真・動画、糞尿被害の記録を残します。

それを踏まえたうえで行政機関や警察に相談しましょう。

まとめ:野良猫の餌は基本的にはNG

本記事では、野良猫への餌やりがダメな理由について解説しました。最後に、重要なポイントをおさらいしましょう。

  • 餌やりは短期間で猫の過剰繁殖につながる
  • 糞尿被害や衛生問題も心配される
  • 迷惑な餌やりは、きちんと注意して止めるようにうながす
  • 解決しないなら、行政や警察への相談を
  • 不法行為があった場合は、証拠をおさえて警察に動いてもらう
  • 野良猫と地域コミュニティの共存を目指すうえでは、TNR活動などさまざまな取り組みが考えられる
  • ただし個人もしくは地域から新規に実施するのはややむずかしい
  • 餌やりのルールを定めるなどして、問題をコントロールするのが現実的

野良猫への餌やりは、地域の安全を揺るがす問題に発展しうるものです。基本的には餌を与えないのことを推奨します。

一度、野良猫が繁殖し、問題が噴出すると、それを解決するには莫大な時間とコストがかかるでしょう。そうならないために、地域全体で危機意識を持ち、無謀な餌やりを防ぐのが大切です。

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