猫も認知症になる?自宅でのケアや予防法を解説

  • 「猫も認知症になるのだろうか?」
  • 「認知症だった場合、どうケアすればよいか?」
  • 「認知症を防ぐにはどうすればよいか?」

このように考えている人は多いでしょう。結論からいうと、猫も認知症になる可能性はあります。

15歳以上の猫の約半数が発症するともいわれており、決してめずらしい疾患ではありません(一般社団法人ペットフード協会の調査による)。

飼い主は「認知症は発症するのは当たり前」という前提で考え、行動する必要があるでしょう。そこで本記事では、認知症に関する基礎知識や必要な対応、自宅でのケアや予防法を解説します。

猫の認知症に関して知りたい人はぜひ参考にしてください。

<この記事を読む前に>

特に知っておいて欲しいのが、「猫が認知症になるメカニズムは、人間のそれとまったく同じ」であること。これは東京大学などの研究によって裏づけられています。

(引用:J-CAST

よって人間に対するケアや予防の方法が、猫に対しても有効だと考えられています。まずはこのことを覚えておいてください。

そもそも猫の認知症とは?疑いが出た場合の対応

まずは猫の認知症がどんなものか理解しておきましょう。合わせて、原因や初期症状のチェックリスト、認知症が疑われる際の対応も解説します。

認知症はややむずかしい疾患であり、飼い主にもある程度の知識が求められます。その点を踏まえて、取るべき対応を取るようにしましょう。

猫の認知症=人間同様に認知機能が低下すること

猫の認知症とは、人間同様に、認知機能の低下によって「普通はできることができなくなる」疾患のことです。

若い頃は十分にあった脳細胞が徐々に失われるなどして、見えるもの、聞こえるものを正しく認知できなくなります。

猫の場合は、トイレの失敗や夜鳴き、徘徊などが症状として挙げられるでしょう。実際のようすは下記する動画が参考になります。

冒頭でも触れたとおり、認知症はめずらしい病気ではありません。

またひがしっぽ動物病院よれば、症状は11歳ごろから現れることもあるようです。

(引用:ひがしっぽ動物病院

認知症は猫にとってめずらしい病気でないことを踏まえて、対応する必要があるでしょう。

具体的な症状の一覧

具体的な認知症の症状の一覧は以下のとおりです。

  • 特に目的もなくウロウロする
  • トイレを失敗する
  • 食欲がない
  • じゃれなくなる
  • おもちゃなどに興味を示さなくなる
  • 夜鳴き、無駄鳴きが増える
  • 怒りっぽくなる
  • 飼い主に対して甘えなくなる
  • 開け方を忘れ、ドアや扉の前だ立ちすくむ
  • 活動量が落ちるetc.

このように、一般的に猫ができそう、やりそうなことができなくなるのが認知症の症状です。

また目に見えない部分では、腎不全や泌尿器不全を抱えるケースもあります。

認知症になる原因は?

認知症になる原因として、以下が挙げられます。

  • 老化による脳細胞の減少や脳の萎縮
  • 自律神経の衰え
  • 過度なストレスや不安感

最大の原因は「脳細胞の減少」です。若い頃は十分にあった脳細胞が数を減らした結果、ものごとを正しく認知できなくなります。

その結果として、認知症の症状が現れるわけですね。

また、通常の飼育では発生し得ないストレスや不安感が、発症の原因になることも。

ただし後ほど解説するように、発症後の症状を緩和したり、そもそも発症するのを予防したりすることは可能です。飼い主としてはこの点に集中するのが大切だといえるでしょう。

認知症かどうかを見分ける初期症状チェックリスト

認知症かどうかを判断できるのは獣医師だけです。ただし、個人でも「それが疑われるかどうか」を判断することは可能です。

これを判断するには、きたのさと動物病院が公開している初期症状のチェックリストが役立つでしょう。

(引用:きたのさと動物病院

上記チェックリストにいくつも当てはまるなら、認知症を疑ったほうがよいでしょう。

またリストはきたのさと動物病院公式サイトからダウンロードできます。

疑いがあるときは病院へ連れて行こう

認知症が疑われる場合は、やはり病院へ連れて行く必要があるでしょう。本当に発症しているかどうかは、獣医師が診ないとわからないからです。

病院へ連れて行けば、診断と同時に、必要な薬の処方や自宅でのケア方法に関する指導を受けられるでしょう。

基本的にどの動物病院でも、認知症に関する診断は受けられます。

ただ、可能であればかかりつけの獣医師に診てもらうのがよいでしょう。過去のカルテを参照するなどして、認知症の有無やその程度をより正確に判断できるからです。

できる限りかかりつけの獣医師に診てもらいましょう。

猫が認知症を患ったときのケアと介助5つのポイント

猫が認知症を患った場合、これまでとは違うケアや介助が必要となります。症状やその程度、猫の性格にもよりますが、おおむね以下は必要となるでしょう。

  1. 高齢猫向けの食事習慣に切り替える
  2. コミュニケーションの時間を増やす
  3. 視覚や聴覚の低下に配慮する
  4. 適度な運動・遊び・日光浴をさせる
  5. 転倒や落下が起こりにくいようにする

こういったことができていれば、猫も飼い主も安心して暮らせるでしょう。また認知症の進行を遅らせる効果も期待できます。

冒頭でも述べたとおり、猫が認知症になるメカニズムは人間の場合とまったく同じです。よってケアや介助も、認知症患者と似ている部分があります。その点を踏まえて、猫の認知症と向き合っていきましょう。

1.高齢猫向けの食事習慣に切り替える

認知症になったら、まずは以下のような、高齢猫向けの食事習慣に切り替えましょう。

  • 高齢猫向けフードに切り替える
  • じゅうぶんに水分を摂取できるようにする

もっとも重要なのは高齢猫向けフードに切り替えることです。これらのフードには、認知機能を高めたり、維持したりする、DHAやEPAをはじめとした成分が入っているからです。

(引用:ペットライン

こういったものを与えれば、認知症の症状を緩和できると見込まれます。また栄養バランスも高齢猫に合ったものなので、より健康的に暮らせるでしょう。

十分に水分補給させるのも重要です。認知機能が低下すると、喉の渇きを感じられず、水分不足になるケースが多いからです。

水飲み場を増やしたり、スポイトを使って与えたりして、十分に水分補給できるようにしましょう。

2.コミュニケーションの時間を増やす

コミュニケーションの時間を増やすのも有効です。話しかけたれたり、体を触られたりすることで、脳を含むさまざまな機能が活性化されるでしょう。

人間の認知症でも、コミュニケーションが認知症の改善や予防に役立つといわれています。同じ動物、同じ脳機能、同じ症状を患っている猫の場合にも、同じことが言えるでしょう。

コミュニケーションといってもむずかしいことではありません。普段のように声をかけたり、撫でたり、抱っこしたりするのが重要です。そしてその頻度を、できるだけ高く保つようにしましょう。

3.視覚や聴覚の低下に配慮する

猫の安全を守るため、視覚や聴覚の低下に配慮しましょう。

症状の程度や個体差にもよりますが、認知症になっているなら、目が見えなくなったり、耳が聞こえにくくなったりしている可能性があります。もしくは正常に見聞きできいるものの、脳機能の低下によって、それを正しく情報処理できていないケースも。

その点を踏まえて、以下のように配慮するとよいでしょう。

  • なるべく大きな声で話しかける
  • 部屋を明るく保ち、見えやすくする
  • ものの位置を変えないようにする
  • 視界が悪い夜は外に出さないようにする
  • 触るときは、一度視界に入ってから触るetc.

特に注意したいのは、「触るときに、一度視界に入ること」です。まったく気づいていないのに急に触られると、大きなストレスになるでしょう。

よって、一度視界に入ってから触るように習慣づけるとよいでしょう。

4.適度な運動・遊びの機会を与えるる

適度な運動や遊びの機会を与えるのも有効です。これで、認知機能を改善、もしくは症状の進行を遅らせられるかもしれません。

人間の認知症患者に対するケアでも、運動やレクリエーションは効果的だとされています。同じ病気を発症した猫にも、同様のことが言えるとされています。

たとえばキャットタワーを設置したり、遊び場を作ったりするとよいでしょう。最近では以下のような「回し車」もあります。

そのほか腕でじゃれあったり、おもちゃで遊んだりするのも有効です。適度に運動と遊びを取り入れ、脳機能が低下しないようにしましょう。

5.事故が起こりにくいようにする

また事故が起こりにくいようにするのも重要です。認知機能が低下していると、何が安全で何が危険かの判断がつきにくくなるからです。

具体的には以下のように配慮しましょう。

  • テーブルや棚に落ちそうなものを置かない(何らかの原因で落下して下敷きになるのを避ける)
  • 登れる場所の下には、マットや布団などを置いておく
  • 電源コードなど、噛んでしまいそうなものはシーリングする
  • お風呂にお湯を張らない、もしくは完全に施錠する
  • できるだけ外には出さないetc.

このように配慮すれば、不慮の事故を避けられます。飼い主の生活の利便性とのバランスを取りつつも、できるだけ安全に過ごせるようにしましょう。

猫に認知症を予防するためにできること?

猫が認知症を発症する可能性は高く、完全に避けるのはむずかしそうです。しかし以下のように工夫すれば、ある程度予防することは可能です。

  • 生活に変化を持たせる
  • 運動や外出の機会を増やす
  • バランスのよい食事を心がける

これだけのことができていれば、認知症を発症する可能性を下げられるでしょう。また冒頭で述べたとおり、人間に対する予防法が、猫にも有効だと考えられます。

ぜひその点を踏まえてうえで、読んでみてください。

生活に変化を持たせる

可能な限り、生活に変化を持たせるのがよいでしょう。新しい経験や刺激は脳機能を活性化させ、認知機能の維持や向上に役立つからです。

(引用:ベネッセスタイルケア

医師の杉山孝博氏によれば、認知症患者に対しては、上記が有効だとされています。つまり猫に対しても、活動や思考に変化をつけ、活発で前向きな生活を体験させるのがよいでしょう。

たとえば新しいおもちゃで遊んだり、知らない人と接したりする機会を与えるなどの方法があります。アスレチックに登らせるのもよいでしょう。

なおこういったケアのことを「環境エンリッチメント」と言います。これに関しては以下で解説しているので参考にしてください。

老猫の介護はどうすればよい?トイレ・食事などすべてのケア方法を解説

運動や外出の機会を増やす

運動や外出の機会を増やすのも効果的です。これによって脳や体が活発に動き、認知能力の低下を遅延させられるでしょう。

運動といっても、さほど強度が高いものでなくともかまいません。以下のようなもので十分です。

  • キャットタワーやアスレチックに登らせる
  • 一緒に遊んだり、じゃれたりする
  • 適度に外出させて自由にさせるetc.

こういった運動の頻度を増やすことで、認知症を予防できるでしょう。ただし外出に関しては、不慮の事故や病気の感染、寿命の短縮なども考えられます。室内飼育なのか、それとも外に出すのかは慎重に判断しましょう。

バランスのよい食事を心がける

バランスのよい食事は、認知症予防の基本です。人間がそうであるように、栄養バランスがきちんとしていれば、認知機能が低下しにくくなります。

とりわけ、以下の成分は認知症を予防するうえで役立つとされています。

  • DHA
  • EPA
  • 中鎖脂肪酸
  • フラボノイドetc.

このような成分を、できる限り摂取させましょう。以下のような高齢猫向けのキャットフードなら、上記に代表される成分をバランスよく得られます。ぜひ一度、切り替えを検討してみましょう。

(引用:ペットライン

猫の認知症に関するよくある質問

本記事では猫の認知症に関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。

  • 猫の認知症は改善・完治することがある?
  • 急に認知症になることはある?
  • 発症後の寿命はどのくらい?
  • 飼い主を忘れることがある?

それぞれ詳しく解説するので、参考にしてください。

猫の認知症は改善・完治することはある?

結論として完治する可能性はほぼありません。

先ほど触れたとおり、認知症は脳の萎縮や脳細胞の減少によって起こりますが、元通りに戻ることはありません。したがって、完治しないと考えるのが自然でしょう。

しかし、飼い主の工夫しだいで症状を改善することは可能です。

本記事で紹介した食事習慣の切り替えや積極的なコミュニケーションを取ることで、認知機能がやや回復したり、そうでなくとも進行が遅延したりすることはあります。

認知症に向き合うときは、完治よりも改善か現状維持を目標にするのがよいでしょう。

急に認知症になることはある?

結論からいうと、ある日突然、認知症になるわけではありません。

症状の原因となる脳の萎縮や脳細胞の減少は、加齢にともない少しずつ進行します。いきなり小さくなるわけでも、脳細胞がどこかへ行ってしまうわけでもないので、急に認知症になることはないでしょう。

しかし進行しているかどうかは気づきづらいもので、明らかな症状が出たときに「急に認知症になった」と感じることはあります。

発症後の寿命はどのくらい?

残念ながら「認知症を発症した猫の寿命」そのもののデータはありません。猫の品種別の平均寿命データはあるので、そちらを参考にしてください。

(引用:家庭どうぶつ白書2017

猫全体だと、平均寿命は14.2歳です。ただし完全室内飼育の場合、16.22歳となります(同白書の2021年版による)。

これと猫の現年齢を比較すれば、残り寿命はある程度推測できるでしょう。ただし認知症による体力低下や食欲不振を踏まえるなら、計算上よりも少し寿命は短くなると考えられそうです。

飼い主を忘れることがある?

認知症が進行した結果、「飼い主を忘れる」ということはあり得ます。

記憶をつかさどる海馬の萎縮が起こり得るからです。

これは東京大学の研究によって結論づけられました。

(引用:東京大学

上記を要約すると、「猫は認知症になると、海馬が小さくなったり、脳細胞が少なくなったりして、記憶を失っていく」とのことです。失った記憶が飼い主との顔や姿、声だった場合、「忘れてしまう」ということは起こり得るでしょう。

まとめ

本記事では猫の認知症に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。

  • 猫の認知症は、人間同様に、認知機能が低下すること
  • メカニズムは人間と同じ、よって認知症患者に対するケアや予防は猫に対しても有効
  • 認知症が疑われるときは病院で
  • 認知症ケアでは、食事習慣の切り替えやコミュニケーション時間増加などが有効
  • 視覚や聴覚低下に対する配慮や、事故防止も重要
  • 認知症を予防するには、生活に変化を持たせたり、バランスよい食事を与えたりするのがよい

発症する可能性が高い、猫の認知症。完全に回避するのはむずかしく、きちんとした知識に基づいてケアできるように努力する必要がありそうです。一方で工夫次第では認知症を予防できる可能性もあります。

本記事を参考に、猫の認知症と向き合っていきましょう。

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