2023.09.30
このように思っている人は多いのではないでしょうか?
猫の腎不全とは、腎臓の機能が著しく低下する病気を意味します。
腎臓は毒素の排出や血圧調整、ホルモン分泌などの重要な役割を担います。これが機能不全になることは、時として猫の生死を左右するかもしれません。
そして腎不全の末期には、いろいろな症状が現れます。そしてその症状に鑑み、猫が少しでも楽に過ごせるように工夫するのが重要です。
本記事では腎不全末期に見られる症状や、飼い主としてやってあげられること、そして最期の看取りに関して解説します。ぜひ参考にしてください。
もくじ
猫の腎不全末期に見られる症状は、「ステージ」によって異なります。
腎不全は、血液検査の結果によってステージ1から4にまで分類されます。
いわゆる「クレアチニン濃度」が2.8から5.0でステージ3、5.0以上ステージ4、つまり末期になるわけですね。
下記ではステージごとで見られる末期症状に関して解説するので参考にしてください。また腎不全末期に併発しやすい病気に関しても解説します。
腎不全ステージ3では、以下の症状が見受けられます。
ステージ3になると、特に「尿をとおした老廃物や毒素の排出」が、機能しなくなることが増えてきます。それをカバーするために多飲多尿になったり、毒素の影響で口内炎を発症したりします。
さらに貧血や食欲低下、嘔吐などの重大な症状が現れることも。
ステージ3の段階でも、かなり重篤な症状が現れているのがわかります。病院では、少しでも症状を和らげるため、腎臓によくない薬を切ったり、食餌療法の指導が始まったりします。
指導をきちんと聞き入れつつ、猫が少しでも楽に暮らせるように配慮・工夫する必要があるでしょう。
ステージ4は、腎不全の最終期にあたり、以下の症状があらわれます。
血尿や痙攣など、さらに重大な症状が確認されるようになります。また後述する尿毒症などを発症し、さらに体調が苦しくなることも。
余命は3ヶ月程度と言われており、かなり深刻な状態です。
ステージ4に到達すると、獣医師が安楽死を提案するケースが増えるようす。腎不全と関連疾患に向き合うのは、猫と飼い主双方にとって、たいへんな負担があるからです。
猫が感じる苦痛や、それを見守る辛さを踏まえれば、おだやかに眠らされてあげるのも、ひとつの選択だといえるでしょう。
関連記事▶︎猫の安楽死は間違っているのか?処置方法や費用を解説
腎不全のステージが進行すると、尿毒症を併発することがあります。これは、腎不全による老廃物や毒素の排出活動が著しく低下した結果に現れる病気です。
症状の一例は以下のとおり。
ご飯を食べなくなったり、貧血で苦しそうにしたり、動けなくなったり、見守るのも苦しい症状が現れるようになります。また「症状」とは異なりますが、「極端な気分の悪さ(悪阻)」を感じた結果として、よだれを垂らすようになることも。
尿毒症を発症した猫の予後は悪く、最悪の場合数時間、数日後に死亡することも。長くとも数ヶ月程度の余命になるため、尿毒症が確認された場合は本格的な看取りの段階に入る必要があるでしょう。
腎不全の末期に入ると、高血圧性網膜症を併発することがあります。これは腎臓の機能が落ちた結果血圧が上昇し、眼球内部での出血や網膜剥離が起こるものです。
上図のとおり、目の奥部分で出血が起こります。放っておくと、完全に視覚が失われることも。
もし腎不全の診察過程で高血圧性網膜症が疑われるなら、できるだけ早い段階で治療する必要があるでしょう。猫にとって、視覚を失った状態で生きることは非常に辛いものです。
少しでもおだやかな最期を迎えさせるためにも、迅速な対応を心がけましょう。
腎不全の末期症状が出た場合、猫は相当な苦痛を感じています。それを少しでも軽減するには、以下の取り組みが必要です。
まず、きちんと通院することが基本となります。腎不全は症状の変化が起こりやすく、都度適切な治療を受けさせるのが、猫の健康を守る、苦痛をやわらげるうえで大切です。
またターミナルケアの実施や、暖かい環境を保つのも、腎不全時には重要なポイントとなるでしょう。それぞれ詳しく解説するので、参考にしてください。
もっとも大切なのは、きちんと通院させることです。上記したとおり、変化する症状に対して都度適切な治療を行いましょう。
腎不全の場合、たとえば以下のような処置がおこなわれます。
このように投薬や点滴、検査や給餌など、さまざまな処置が受けられます。それぞれの症状を治療、もしくは苦痛を軽減するうえで、こまめな通院は欠かせないといえます。
ただし通院すること自体が猫のストレスになることも。その点も踏まえて、通院するペースを判断するとよいでしょう。
腎不全末期を迎えた場合は、基本的なターミナルケアを実施するようにしましょう。
ターミナルケアとは「闘病をやめ、残された時間を可能な限りおだやかに過ごすための治療」を指し示します。
基本的には以下のように、自宅でケアを実施するのが一般的です。
具体的には、排泄を手伝ったり、寝たきりで過ごすのを見守ったり、薬を与えたりします。そこまでむずかしいことではなく、今まで以上にていねいに面倒を見る、と考えればよいでしょう、
ターミナルケア自体は腎不全特有の対処ではありません。ただし多くの症状や相応の苦痛がともなう腎不全末期においては、特別な配慮が必要です。
だからこそ、ていねいなターミナルケアが重要になるわけです。この点に関しては老猫の最期の看取り方とは?飼い主ができる最期にできることで詳しく解説しているので参考にしてください。
こと腎不全の場合は、ステージにもよりますが、できるだけ食事を摂らせるようにしましょう。栄養不足に陥るのを防ぐためです。
たとえば以下の工夫が考えられます。
無理に食べさせるわけではなく、頻繁にご飯を目の前に出すようにしましょう。そうすると、意外にも食べてくれることがあります。
また、意外にも「ご飯を温める」のも有効です。「食べるか食べないか」を判断するうえで重要な匂いがより強く放たれ、食に興味を示すようになる可能性があります。
また獣医師指導のもと、点滴や強制給餌をおこなうケースも。そういった処置をおこなうかどうかは、指示にしたがうのがよいでしょう。
ターミナルケアが「残された時間を幸せに過ごす治療」であるなら、食べたいものを食べさせるのも大切です。これによって、辛い症状に苦しむ猫に、それなりに大きな幸せを与えられます。
一般には「美味しいけれど食べさせるべきではない」とされているものも、食べさせてあげましょう。
たとえば生魚や焼き魚、鰹節などが挙げられます。
本来きちんと栄養バランスが計算されていない魚類を与えるのは、よいことではありません。しかし腎不全の末期であれば、多少のバランスの乱れは問題にならないわけです。
最後に好きなものを食べさせてあげましょう。そうすることが、飼い主の精神的な安定につながる部分もあります。
暖かい環境を保つのも重要なポイントです。腎不全を患うと、低体温になることが多いからです。
体温が下がると、体調が悪くなったり、呼吸がしづらくなったりします。極端な低体温状態になると意識レベルが下がり、最悪の場合死に至ることも。
よって、できるだけ暖かい環境を整えてやる必要があります。エアコンやストーブなどを使って、高めの室温を保ちましょう。
以下のようなキャットドームを使う方法もあります。
このようにグッズを使えば、保温するとともに、「狭いところに居たい」という猫の欲求を満たすことも可能です。ドームは1,000円から3,000円とさほど高くないので、一度購入を検討してみましょう。
腎不全が末期に近づくにつれて、猫は少しずつ動けなくなっていきます。最終的には「看取り」の段階に入ります。
とはいえ「看取り方がわからない」という人も多いでしょう。具体的には、以下の方法で看取るのが一般的です。
腎不全の場合は「余計に触らない」のがポイント。なぜなら、死期を早める可能性があるからです。
また、静かな場所で過ごさせるのが基本です。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
腎不全の場合は、猫の体に余計に触らないようにしましょう。末期では些細なスキンシップが、相当な負担になる可能性があるからです。
腎不全が進行すると、腎臓のみならずあらゆる臓器に悪影響が波及しています。そしてちょっとした拍子で何らかの臓器に大きな負担がかかり、体調に影響する可能性があるわけです。
猫の安全を守るためにも、触るときは撫でる程度にし、抱き抱えたりするのは避けましょう。
実のところ、猫を看取る段階でしてあげられることはさほど多くありません。そのなかでも「静かな場所を作って過ごさせる」というのは、数少ないやってあげられることのひとつです。
具体的には、以下のような場所がよいでしょう。
特に多飲多尿の時期は、トイレが近くにあることは重要になります。
また、猫にとっては、以下のような「横向きの姿勢」がもっとも楽だと言われています。
このポーズが取りやすい環境を整えて、少しでも楽に過ごせるように配慮しましょう。
またポジティブな声かけをおこなうのも、猫の幸福につながります。なぜなら、猫は「人間の言っていることが、ある程度わかるから」です。
海外の研究によれば、猫は人間の声と表情を観察して、感情を読み取る能力を持っているとのこと。つまりやさしい声と表情でコミュニケーションを取れば、猫も喜んでくれるわけです。
そうすると、辛いターミナルケアの期間も、いくらか楽になるかもしれません。
ちなみに、人間が猫の表情を見て、感情を読み取ることも可能です。
上図は猫が感じている苦痛を推測する際に使われる「ペインスケール」と呼ばれる資料です。スコアが高ければ高いほど、痛みや苦しみを感じています。
つまりスコア1、スコア2の表情をしているとき、体をさすったり、薬を与えたりすれば、よりおだやかな時間を過ごせるかもしれません。
ステージ4および毒尿症などの症状があらわれたら、余命は数日だと推測されます。このあたりから異体保存の準備を始めましょう。
具体的には以下のものを用意する必要があります。
現代では、猫がなくなったあと、火葬するのが一般的です。亡くなってから準備するのは少したいへんなので、ターミナルケア中に用意しておくとよいでしょう。
今回は猫の腎不全末期に関して解説しました。最後によくある質問に回答します。
まず、ややわかりにくい余命に関して回答します。また腎不全末期から復活する可能性などにも触れています。ぜひ参考にしてください。
腎不全を患った場合の余命は、医学情報統合サイト「子猫のへや」によれば以下のとおりです。
ベースラインとは「腎臓の不調が原因による『高窒素血症」の治療があった場合」の余命日数です。つまりステージ4なら、最悪の場合、余命は1ヶ月程度となるでしょう。
また尿毒症などの影響で、さらに寿命が縮まる可能性もあります。末期に近づいているのであれば、早い段階で心の準備しておいたほうがよいでしょう。
結論からいうと、完治するケースは聞かれません。しかし宣告された余命よりもはるかに長く生きる子もいます。
上動画の「さくら」は、腎不全と診断された猫です。余命は半年と宣告されました。
しかし飼い主のケアや積極的な治療、また薬の効き目が顕著にあわれたことから、宣告された余命半年から1ヶ月経過しても、比較的元気に動き回っています。
かならず、とはいえませんが、腎不全になったとしても、徹底したケアを実施することで、残り寿命を大きく伸ばせる可能性はあるといえそうです。
末期になると頻繁に鳴く理由として、以下3つが推測されます。
まず、何らかの苦痛を感じているがゆえ、助けを求める意味で鳴くことがあります。この場合は、処方されている薬を与えるなどする必要があります。
また一緒にいてほしかったり、感謝を伝えたかったりして鳴くこともあります。その場合は、ただそばにいてあげることが、猫にとってもっとも幸せだといえるでしょう。
本記事では、猫の腎不全末期に見受けられる症状に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
腎不全は、猫にとってかなり厳しい病気です。特にステージ4まで進行している場合は、根治よりもターミナルケア、つまり「残された時間をおだやかに過ごす」ことを目標にしたほうがよいでしょう。
きちんとケアして、快適に過ごせる環境を整備すれば、最期の時間を幸せに過ごせます。本記事を参考に、猫の最後をやさしく看取ってあげましょう。
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