2023.10.31
このように思っている人は多いのではないでしょうか?
現代の猫との生活において、「19歳の壁」は、非常に重要なキーワードです。この壁の意味を理解しているか、あるいは乗り越え方を知っているかどうかで、猫と飼い主の暮らしぶりは大きく変化するでしょう。
本記事では猫における「19歳の壁」の定義や、その乗り越え方を解説します。ぜひ参考にしてください。
もくじ
猫における「19歳の壁」とは、「年齢が19歳になると、生存率が著しく低下する現象」を示します。
近年、医療やペットフードの発達により、猫の寿命は大幅に伸びました。2000年には7.9歳だった平均寿命が、2020年には15.66歳まで伸びています(市田動物病院、一般社団法人ペットフード協会-令和3年全国犬猫飼育実態調査結果)。
しかし、長寿化にも限界があり、ある一定のラインを超えると生存できない年齢にぶつかりました。それが「19歳の壁」です。
ではその壁がどれほど高いのか、なぜ19歳になると生存率が落ちるのか、下記で解説します。
「19歳の壁」は、非常に高いものだと考えられます。
(引用:猫部)
これは高齢猫に対する取材を実施するメディア、「猫部」が公開しているグラフです。
取材対象のうち、15歳から18歳の猫は数が多く確認されています。18歳は2頭もいました。
しかし19歳以降になると一気に数が減り、19歳の猫はわずか8頭です。
おそらくメディアとしては、「特に高齢な猫を取材対象としたい」と考えていたはずです。にもかかわらずその数が少ないなら、やはり19歳の前後に高い壁があるといえるでしょう。
この壁をどう乗り越えるかが、猫の長寿を願う飼い主たちの間で、ひとつのポイントとなりつつあります。乗り越え方に関しては後ほど解説するとして、「19歳」がいったいどういう年齢なのか、もう少し理解を深めていきましょう。
ちなみに猫における19歳とは、人間で言うと92歳前後に該当します。
(引用:コトブキ獣医科医院)
人間の平均寿命は、男性が81.05歳、女性が87.09歳。その基準で考えれば、19歳まで生きているのは、かなり長寿命だといえます。
もちろん人間と猫の年齢に対して同じ解釈を取れるわけではありません。しかし19歳という年齢が長寿の部類であることをある程度示唆しています。
人間でいうと相当な高齢であることを踏まえて、日頃の面倒を見てやるのが大切といえるでしょう。
猫が19歳前後を迎えると、さまざまな病気にかかりやすくなります。
このような病気は、若いころにも発症することはあります。しかし19歳以上になると、症状が重篤だったり、また併発したりする傾向にあります。
これにより寝たきりになる、入院措置が必要になる、といったケースが増えるわけですね。それがさらに重症化すると、命に関わってくるようになります。
病気にかかりやすいだけでなく、手術がむずかしくなる傾向もあります。加齢によって、体力や自己治癒能力が低下し、手術負担に耐えきれなくなるからです。
若いころであれば、大きな手術を耐え抜くスタミナがありました。しかし19歳を超えてくると、そもそも日々の生活を生きるので精一杯です。手術に耐えられる余力は残っていません。
このようなケースでは、たとえ手術しなければ命を落とす病気にかかっても、苦痛や失敗のリスクは避けて、残された時間をおだやかに過ごす選択がなされることもあります(ターミナルケア)。
つまり、「治したくても治せない」状態に陥る可能性があるわけです。猫を長生きさせたいなら、そもそも手術が必要になる病気に、できるだけかからないように配慮する必要があるでしょう。
多くの人は、「猫には、19歳の壁を乗り越えて、長生きしてほしい」と思っているでしょう。そのためには、若いころから健康に気をつけて育ててやる必要があります。
具体的には、以下のように面倒を見ましょう。
なお、全年齢の共通事項として、完全室内飼育することをおすすめします。一般社団法人ペットフード協会のレポートによれば、室外飼育で2.5年ほど寿命が縮むからです。
その点以外の、各時期での面倒の見方を解説するので参考にしてください。
0歳から10歳までは、元気に活動させてかまわないのですが、感染症や怪我には注意しましょう。これらがのちのち19歳の壁を乗り越える際、問題になることがあります。
たとえば、フィラリア症と呼ばれる、寄生虫を介した感染症があります。
(引用:ぽちたま薬局)
これに感染した場合は、将来的に重大疾患が生じやすい心臓などを傷めてしまうでしょう。そうすると、19歳の壁を乗り越えられなくなるかもしれません。
こういったことを避けるため、定期検診やワクチン接種、室内飼育などを実施するのが重要となるでしょう。
怪我に関しても同様のことが言えます。多少のすり傷程度ならともかく、骨折や多量出血をともなうような大怪我が、寿命を縮めこそすれ、伸ばすことはありません。
自宅内で事故が発生しないように環境整備するなどの工夫が必要でしょう。
11歳あたりからは、猫はシニア期と呼ばれる期間に入ります。ここから高血圧や腎不全など、さまざまな病気になりやすくなります。それを防ぐためにも、以下のような生活を心がけましょう。
定期検診はどの年代でも必要ですが、シニア期になると、その重要性は高まります。またフードもシニア向けに切り替えていきたいところ。
(引用:ロイヤルカナン)
シニア向けのフードは、老化をゆるやかにしたり、あらゆる病気を防いだりするための成分が多分に配合されています。年齢を迎えたら、かならず切り替えるようにしましょう。
室外に出す頻度も減らす、あるいは完全室内飼育に切り替えたいところです。そうすることで生じるストレスを、キャットタワーやアスレチックで解消するような流れが作れると理想的です。
15歳から先は、老齢猫の中でもさらに高齢な部類に入ります。人間で言えば80歳を超えています。
ここから先は、あらゆる病気や感染症に注意しなければいけません。また容態が急変し、突然死してしまうケースがあります。
引き続き健康に生きられるように、以下のように注意しましょう。
このように、15歳以前よりもさらに健康に気をつけてやる必要があります。まず定期検診の頻度は、最低でも半年に1回は保ちたいところです。もちろん3回でもかまいません。
そして行動や食欲などのバイタルサインに注目し、何か問題があればすぐに病院へ連れていくようにしておきたいところです。
この年代の面倒の見方に関しては以下の記事が役立つので、参考にしてください。
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老猫の介護はどうすればよい?トイレ・食事などすべてのケア方法を解説
19歳の壁に至る前、16歳から18歳でも、十分な長生きだといえます。
先ほど触れたとおり、猫の平均寿命は15.66歳です。
(引用:一般社団法人ペットフード協会-令和3年全国犬猫飼育実態調査結果)
よって16歳から18歳まで生きている時点で、長く生きている部類に入ります。
しかしそれは体が相当に弱っており、病気や感染症を発症しやすい、あるいは重症化しやすいことも示唆しています。
猫が、平均寿命より長く、懸命に生きていることを理解し、手厚くケアしてやるようにしましょう。
関連記事▶︎猫も認知症になる?自宅でのケアや予防法を解説
18歳になると、いよいよ19歳の壁を目前に迎えます。これを乗り換えるため、以下を徹底しましょう。
18歳の時点で、人間で言えば88歳。すでに、いつ何が起きてもおかしくない状態です。これまで以上に健康に気をつけなければいけません。それぞれのポイントを詳しく解説するので参考にしてください。
これまでもそうですが、19歳の壁を目前に控えたなら完全室内飼育に切り替えましょう。この年齢で外に出すのはかなり危険です。
若いころと比較して、感染症にかかったり、事故に遭ったりする可能性は高いです。また残り少ない体力を使ってしまい、体調を崩してしまうことも。
これまで室外飼育していた場合は、猫が外に出たがるかもしれません。
しかし猫の安全を守る、および19歳の壁を乗り越えるためには、多少不自由させてでも完全室内飼育を徹底しましょう。
定期検診に関しては、できれば3回は行くようにしましょう。
19歳の壁を目前に控えれば、いつ、何の病気の初期症状が現れてもおかしくありません。それに対して早期対応するためにも、頻繁な定期検診は必要です。
(引用:兵庫みなと病院)
上図のように、多くの動物病院が、高齢猫に関して年複数回の定期検診を推奨しています。
こと19歳の壁を目前に控えているなら、3回以上受けても多すぎることはありません。できるだけ頻繁に定期検診を受け、病気に早期対応できるようにしておきましょう。
19歳の壁を目前に控えたら、「迷ったら病院に行く」姿勢を徹底しましょう。ほんのささいな兆候が、大病の初期症状かもしれません。
もちろん、「こんなささいなことで、病院に行く必要があるのか?」と思う場面もあるでしょう。しかしそこで来院したことにより、救われることもあります。
上記動画は、飼い主がシニア猫のほんのわずかなようすの変化を心配し、動物病院へ連れて行った際のレポートです。診断結果は十分な治療が必要な心臓病でした。
もし飼い主が「ちょっと疲れているだけだろう」と片付けていたら、命を落としていたかもしれません。こと19歳の猫ならその可能性はより高いでしょう。
突然の死を防ぐためにも、「迷ったら病院へ連れて行く」というつもりでいましょう。
適度に運動や日光浴をさせるのも重要です。これにより、猫の健康状態を安定させられるからです。
高齢猫が体調を崩す原因はさまざまですが、運動不足も例外ではありません。じっとしているがゆえに血流を悪くする、サルコペニア(病的な筋力低下)を発症するなどの問題が考えられます。
そういったことを避けるため、少し歩かせるなどしましょう。猫がそうしたいなら、じゃれる相手になってもかまいません。
また血行改善や殺菌効果のある日光浴をさせるのもおすすめです。ときどき日の元に出してやるなどするとよいでしょう。
こういったことを積み重ねていけば、19歳の壁を乗り越えられる可能性も高まるでしょう。
本記事では猫の「19歳の壁」に関して解説しました。ここではよくある質問に関して回答します。
特に老衰の前兆に関してはよく知っておく必要があるでしょう。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
老衰の前兆として以下が挙げられます。
こういったことが増えてくれば、老衰が進んでいると判断できます。場合によっては、お別れの瞬間が近いことを念頭に入れたほうがよいかもしれません。
関連記事▶︎猫が死ぬ直前にみせる兆候とは?お別れ前に知っておきたい最期の行動
一説によれば、日本の猫の長寿記録は36歳です
明治時代の動物学者である平岩米吉の「猫の歴史と奇話」によれば、青森県で飼われていた”よも子”が36年生きたとされています。
しかし36歳まで生存していた根拠が乏しく、今のところ一説にしか過ぎません。
また、よも子が生きた時代は1930年前後。まだギネスワールドレコーズが立ち上がっておらず、ギネス記録として認定されることもありませんでした。
ちなみに世界記録は、実に38年を生き抜いた米国ペリー家のメス猫、「クリームパフ」だとされています。
(引用:How to Raise a 165-Year-Old Cat)
前提として、化け物、猫又はフィクションであり、年齢関係なくそのように変化することはありません。
ただ伝承としては、20年前後生きた「猫又」になるとされています。
(引用:国際日本文化研究センター)
猫又に化けることが噂された時代、猫の平均寿命は現代よりもずっと短かったはずです。そのなかで20年も生きれば、「化け猫になる」とも言われそうですね。
現代でも20年以上生きるケースはまれです。またそれは、「平均寿命を大きく超えて、なんとか生きている」ということでもあります。
長生きであればあるほど、病気や感染症になる可能性が高いので、十分に注意しましょう。
本記事では、猫における19歳の壁に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
近年、猫の平均寿命は大幅に伸びました。しかしその結果、19歳の壁を乗り越えられるかどうか、という新しいハードルも出てきました。
長生きさせたいなら、若いころからできるかぎり健康や安全に配慮し、大切に育てる必要があるといえるでしょう。
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