2023.03.28
上記のように考えている人は多いのではないでしょう。
飼い主と行き場を失った犬猫の命を、行政がやむなく奪う殺処分。動物愛護団体などの努力もむなしく、いまだに年間1万頭以上が殺処分されているのが現状です。
このことに心を痛めているのは、おそらく私たちだけではありません。本記事を読んでいる人の多くが、同じような気持ちを持っているでしょう。
そこで今回は以下の点を解説します。
本記事を読めば、犬猫の殺処分の現状を理解し、今できることが何なのかが見えてくるはずです。ぜひご参考にしてください。
もくじ
そもそもなぜ犬猫の殺処分がなくならないのか、その理由をおさえましょう。
そのあとで、(少々ショッキングながら)殺処分のより深刻な現状を解説します。
犬猫の殺処分が減らない理由は、上智大学網倉ゼミナールの論文によれば、犬猫の頭数が、人間が飼育できるキャパシティを上回っているからです。
人々が飼いきれない数の犬猫が存在するために、処分する必要が出てきます。もう少し具体的な問題としてたとえるなら、以下のとおりです。
人間が犬猫を飼育できるキャパシティには、様々な要因からなる限界があります。
そのキャパシティが犬猫の数以上でない限り、殺処分は起こり続けるでしょう。
犬猫が殺処分に至る理由はさまざまです。ただ、大阪府東大阪市動物指導センターによれば、「処分の直接的な原因は、飼い主の飼育放棄である」とのこと。
犬猫の殺処分を減らすとなれば、まずは飼育の放棄理由を理解し、対策する必要があります。
環境省の調査によれば、飼育放棄してしまう原因は以下のとおり。
(引用:帝京科学大学)
犬の場合は飼い主の病気や傷病が、猫の場合は遺棄取得が主たる原因となっています。このふたつの具体的な解決方法を考えて実行するのが、殺処分を減らすうえで重要です。
犬猫の殺処分は、大阪府東大阪市動物指導センターによれば、ほとんどの場合炭酸ガスを吸わせて窒息させる方法で実行されます。
この動画は、札幌市動物管理センターが公開した殺処分の流れをおさめた映像です。処分対象となる犬猫が、銀色の箱の中へと進んでいきます。
これはドリームボックスと呼ばれる装置。蓋をすると密閉され、炭酸ガスが噴射されます。そうすることで犬猫が二酸化炭素中毒を起こし、窒息死するしくみ。
ちなみにこの方法には、いわゆる”安楽”が考慮されていません。窒息する苦しみと死の恐怖があり、ドリームボックスには犬猫がもがき苦しんだことを示す爪痕も残っています。
一方で注射による安楽死が選択されるケースもあります。
炭酸ガスと比較して苦痛が少ないのが特徴です。ただし麻酔の取り扱いには安全確保などの面で課題があり、これが普及を妨げている部分もあります。
さらに獣医師広報版によれば、活動的な犬猫を固定し、正確に注射を打つのが困難だとする指摘もありました。
またコスト面の問題から、短時間で多数の犬猫を処分できる炭酸ガスによる窒息死が優先される場合も。
「せめて楽に死なせてやりたい」という想いがあっても、技術や費用の問題で、それさえ叶わない現実があります。
安楽死注射は、犬猫の命を奪うだけでのものではありません。注射を打つ獣医師を苦しめるものでもあります。
安楽死させるためには、自分の意志で、大量の麻薬を静脈に打ち込まなければいけません。獣医師の神坂由紀子氏によれば、そのせいで動物の診療できなくなった医師もいるとのこと。
(引用:PRESIDENT Online)
殺処分の多さは、獣医師の精神的負担を考えても厳しい状況です。この問題を解決するためには、やはり処分される犬猫を減らしていくしかありません。
殺処分に関しては多くの人が否定的な考えを持っています。
(引用:moffme)
ほけんROOMの調査では、飼い主がいない犬猫の処分に対して、実に64.8%が「殺処分はすべきでない」と回答しました。
一方で9.1%が、処分すべきだと答えています。その理由として、例えば以下が回答されています。
(引用:moffme)
総合すると、「かわいそうだが、世話をしきれない現状を踏まえれば”仕方ない”」とするのが主な理由です。
ほとんどの人は、犬猫の殺処分に関して、強弱はあれど否定的に考えています。その考えをいかに実行に移し、犬猫の処分数を減らすかが重要です。
犬猫の殺処分に関しては、環境省などからさまざまな調査データが公表されています。下記では特に重要な数値を紹介するので、ご参考にしてください。
環境省によれば、令和3年に国内で殺処分された犬猫の頭数は14,457頭でした。
(引用:環境省)
これだけの犬猫が処分されているのは、もちろん残念なことです。ただし過去のデータと比較すると、殺処分数は劇的に減少しています。
平成16年には394,799頭が処分されていたのが、令和3年では1/27にまで低減されました。この事実は棒グラフで俯瞰するとわかりやすいでしょう。
(引用:環境省)
「殺処分は減らせない」と諦めている人も多いでしょう。たしかに、ゼロとするのはむずかしいかもしれません。
しかしこれまで殺処分を減らす活動が成果につながったのは、グラフを見れば明らか。諦めることなく、殺処分数が減るように、取り組み続けることが重要です。
環境省の令和元年度調査によれば、都道府県別での犬猫の殺処分数は、下記三県がワースト3です。
犬猫の殺処分数は、人口と比例していないのが特徴です。それよりも行政がどの程度の問題意識を持っているかが重要でしょう。
ちなみに47位(最も殺処分が少ない)は京都府で、殺処分数は117匹。
また高知県や香川県では、飼い主の持ち込みが原因で殺処分に至った数が0だったと報告されています。
ちなみに神奈川県は、「令和3年度の犬猫の殺処分数が0だった」と報告しています。犬に関しては9年連続でゼロでした。
(引用:神奈川県)
一方で産経新聞は、”犬猫収容数・殺処分実態反映しない神奈川県発表 ほど遠い「ゼロ」、誤解の恐れ”と題した記事を出しています。
同報に”実際には殺処分がおこなわれた横浜・川崎・横須賀市のデータを計上していない」とのこと。つまり、殺処分数ゼロだったエリアだけをピックアップしている可能性が示唆されています。
仮にそうだとすると、犬猫の殺処分の実情が現実よりも過小に評価されかねません。結果として問題の解決を遠ざける可能性もあります。
とはいえ神奈川県が犬猫の殺処分数を減らすために、相当努力しているのは実実のようです。
(引用:神奈川県)
上記のように譲渡会やボランティアとの連携を活発化させています。また、少なくとも横浜・川崎・横須賀市以外で殺処分がなかったのも事実。
神奈川県全体の数値の実情はさておき、譲渡会に参加したり、ボランティアとして活動すれば、殺処分数の減少に貢献できるのは間違いないでしょう。
現状で、世界各国での犬猫の殺処分件数をランク付けしたデータはありませんでした。ただし以下の資料によれば、米国がワースト上位であるとはいえそうです。
(引用:アニマル・ドネーション)
2012年から2013年にかけて、犬猫およそ270万頭を殺処分したとのこと。わずか2日の間に令和3年1年間の日本での殺処分数と同等の犬と猫を殺した計算になります。
ドイツが犬猫ともに殺処分がゼロだと報告されていますが、これは鵜呑みにはできません。安楽死は実施しているからです。
殺処分を”動物の命を奪う”と定義するなら、ドイツの殺処分数はゼロではありません。本当に殺処分がゼロだとするには、いかなる方法でも意図的に動物を殺さないことが求められるでしょう。
本記事を読んでいる人の多くは、犬猫の殺処分を減らしたいと考えているでしょう。
個人ができる範囲でいえば、以下の取り組みが有効です。
いずれも直接的もしくは間接的に殺処分を減らせる取り組みです。それぞれ詳しく解説するのでご参考にしてください。
最も直接的な取り組みは、殺処分される前の保護犬や猫を引き取り、里親となることです。
保健所や動物愛護センターに収容された犬猫は、ただちに殺処分されるわけではありません。施設ごとでばらつきはありますが、数週間から1ヶ月程度は引き取り手が現れる可能性を考慮し、一時的に飼育するのが基本です。
つまり里親として立候補し1頭引き取ったなら、明確に殺処分の数は”1”減ります。なお引き取りする方法は下記の記事で解説しているので、ぜひご参考にしてください。
すでに犬猫を飼っているなら、避妊や去勢術を受けさせるのが重要です。そうすることで、飼育能力以上の頭数を抱えずに済みます。
犬猫は、ともに繁殖力の高い動物です。特に猫の繁殖スピードはすさまじく、1頭の猫が妊娠すれば、子孫間での近親相姦だけでも2年後には80頭まで増加します。
このペースが、一般家庭の飼育能力を超えているのは明らかです。したがって飼育する犬猫すべてに避妊・去勢手術を受けさせる必要があります。
手術は各地の動物病院で受けられ、かかる費用は15,000円から30,000円程度です。
ちなみに飼育能力の限界を超えて犬猫が繁殖した状態は、多頭飼育崩壊と呼ばれます。
多頭飼育崩壊が生じてしまった場合、多くの犬猫を処分しなければいけなくなるでしょう。こうなる前に避妊・去勢手術を受けさせるのが重要です。
すでに犬猫を飼っているなら、責任を持って犬猫を飼い続ける必要があります。
大阪府東大阪市動物指導センターによれば、「処分の直接的な原因は、飼い主の飼育放棄である」とのこと。つまり最後まで責任を果たし、殺処分数の増加に加担しないことが重要です。
とはいえ、飼い主の死去や傷病、転勤などが原因で飼育が困難になることもあります。この場合は、動物愛護団体などに生涯にわたる引き取りを依頼する方法が考えられるでしょう。
私たち”ねこほーむ”も、動物愛護団体として猫の譲渡相談をお受けしています。現在お困りの方はぜひご連絡ください。
本記事では犬猫の殺処分がなくならない理由に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
本来であれば、犬猫の殺処分はゼロであるべきです。しかし人間の都合により、処分されている子たちは、令和3年時点で14,457頭もいます。
しかし年々減少傾向であり、平成16年度と比較すればおよそ1/27の数字となりました。つまり殺処分数を減らす活動は、決して無駄でなかったわけです。
「不幸な犬猫をすこしでも減らしたい」と考える人は、ぜひあきらめずに活動を続けてもらえればと思います。
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